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マドレーヌをもう一度-一章?

[330]  鈴里ユウ  2007-09-13投稿
ところがこの日、ケイトに思いがけないことが起こった。
アランの方から彼女に話かけてきたのである。
ケイトは後にその時のことを思いだそうとするのだが、緊張したせいか全くもって無理だった。あまりに彼女の心の容量をオーバーしたらしい。同じ候補生のリン・ケリーが偶然、その様子見掛けたのだが、ケイトは「呆然と、引きつった笑みを浮べて」いたらしい。
ただ一つ、分かっていることがある。
それが食事の誘いであり、ケイトと「シェル」シェリーの付き合いの始まりだった、ということだ。
そのことはすぐにケリーを含めた三人の候補生の知る所となった。グエン・ナムツェルは自分に恋人がいないため、二人が仲良くするのを見て、はじめイライラしていた。が、気持ちの切り換えが早い彼は、すぐに転換して気にしなくなった。しかし、アランを空戦のライバル視していたグエンは、彼に対して余計に神経を尖らせることになったのは否めない。
アジド・アジャールは人柄がよく、そうした面で「苦労人」だったので、グエンとアランが喧嘩にならないように注意していた。無論、彼自身はアランとケイトの関係になんら異存はない。ただ一つ悩みだったのは、恋愛に不器用なアランがちょくちょく彼に相談をすることだった。
リン・ケリーはケイトの親友だったが、内心はアランに恋心を抱いていたので、この事実に動揺した。しかし、そのことを表に出さないので、ケイトはそのことを知ることはついに無かった。
彼らは、候補生という特別な存在だったのだが、やはり気持ちは学生の延長であった。だが、現実は戦争の時代だった。そのことはやがて五人にある悲劇をもたらすことになるのである…

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