可愛いあのコ
「可愛いなぁ…」
ガラスごしに見るあのコはとても愛らしい。
くりくりとした瞳、長い睫毛、すらりとした手足。
どれをとっても、すっげぇ可愛い。
もう3ヶ月も前からここに通っているのに、一向に思いは伝わらない。
「はぁ…所詮無理だよなぁ」
彼女が欲しい。何もしなければ手に入らないと解っているが、
「貯金3万しかないんだよなぁ〜」
学生にはお金がない。
「すみませーん」
ひらりとスカートをなびかせて、一人の女子高生らしき人物が店内に入る。
すると、ガラスごしにいたあのコは店員と共に消えてしまった。
「まさか…」
俺は急いで店内に入る。
するとあのコは女子高生に抱っこされていた。
「わぁー店長、売らないでって言ったのにッ!!」
抱っこされている茶色い縮れ毛のトイプードルは、俺の声に驚いたようでキャンキャンと吠えた。
「だって君、3万円では売れないよ」
ペットショップの店長は苦笑いしながら言った。
「あのぉ…」
女子高生がおずおずと話し掛けてきた。
「うぅ…マロンちゃん」
涙ぐみながら女子高生を見ると…このコもマジで可愛いかった。
「あは、マロンちゃん?私もその名前付けようと思ってたの」
女子高生は笑顔で言う。
とたんに俺は胸がキュンとした。
「良かったらマロンちゃん見に来て下さい」
その場ですぐメルアド交換して、彼女たちを見送った。
「あー犬になりてぇ…」
あんなにマロンちゃんにご執心だったのに、一瞬で抱っこされるマロンちゃんになりたいと思うとは。
直ぐに携帯を取り出し、メールを打ち始める。
貯金の3万は彼女を遊びに誘い出す資金になるのだろう。
END
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