黒の心は光を見つめる 2
何故こんなことになってしまったのだろう。私はお向かいのおばあさんが風邪を引いてしまったので、薬草を取りにこの森に入っただけなのに。必要な分だけ取ってすぐ帰るつもりだったのに。私はやっぱり殺されるのかな。どうせ殺されるなら昨日取っておいた大好きなレーズンパン、全部食べておけば良かったな。
後悔と自分の悲劇を嘆いている彼女には、彼の声など全く届いていなかった。ただ泣きながら目を瞑り必死に身を強張らせている。すると彼は彼女を自分の正面に振り向かせ、頬に手を添えた。
「泣くな。」
彼女は突然触れた手にビクッとしたが、それ以上に涙を拭いてくれているという彼の行動に呆気に取られていた。さっきとは違い、穏やかな声と優しい手に戸惑いを隠せない。何をしているんだろう。私は殺されるんだよね?なんでこの人、私の涙を拭いてくれてるんだろう。
彼女の涙はいつの間にか止まり、その温かい手に心地良さを感じていた。ふと、彼女は青年の顔を見上げた。
頭一個分ほど高い場所にある彼の顔をよくよく見ると、とても端整な顔立ちをしていた。少し高めの鼻に、汚れてはいるが、青く背中までかかる長い髪。洗ったらもっと綺麗に見えそうだ。中でも目を惹くのは、その青い瞳だった。青く澄んだ瞳はまるで海のように素敵だと、彼女は思った。
「…何を見ている?」
「えっ?」
どうやら見とれていたらしい。彼がこちらを凝視しているのに気付いた彼女は、気恥ずかしくなって目を背けた。
「あ、えと、その……。」
彼女が何も言えないでいると、今まで無表情だった彼が一瞬だけ、捨てられた子犬のように悲しい目をした。
が、彼はそんな目をしなかったかのように無表情に戻り、右を指差した。
「この先に村がある。食べ物を少し持って来い。断れば……。」
先程の優しい目の面影もないほどの鋭い眼光で睨まれた彼女は、再び泣きそうになりながら黙って頷いた。
「ただし、俺のことを誰にも言うな。言った時点でお前を殺す。わかったな?」
彼女は必死にこくこくと頷いた。
「頼む。」
彼女は彼が指差した方向に歩き始めるが、五歩ほど歩いたところで彼女は足を止め、突然こちらを振り返った。
「あ、あの……。」
後悔と自分の悲劇を嘆いている彼女には、彼の声など全く届いていなかった。ただ泣きながら目を瞑り必死に身を強張らせている。すると彼は彼女を自分の正面に振り向かせ、頬に手を添えた。
「泣くな。」
彼女は突然触れた手にビクッとしたが、それ以上に涙を拭いてくれているという彼の行動に呆気に取られていた。さっきとは違い、穏やかな声と優しい手に戸惑いを隠せない。何をしているんだろう。私は殺されるんだよね?なんでこの人、私の涙を拭いてくれてるんだろう。
彼女の涙はいつの間にか止まり、その温かい手に心地良さを感じていた。ふと、彼女は青年の顔を見上げた。
頭一個分ほど高い場所にある彼の顔をよくよく見ると、とても端整な顔立ちをしていた。少し高めの鼻に、汚れてはいるが、青く背中までかかる長い髪。洗ったらもっと綺麗に見えそうだ。中でも目を惹くのは、その青い瞳だった。青く澄んだ瞳はまるで海のように素敵だと、彼女は思った。
「…何を見ている?」
「えっ?」
どうやら見とれていたらしい。彼がこちらを凝視しているのに気付いた彼女は、気恥ずかしくなって目を背けた。
「あ、えと、その……。」
彼女が何も言えないでいると、今まで無表情だった彼が一瞬だけ、捨てられた子犬のように悲しい目をした。
が、彼はそんな目をしなかったかのように無表情に戻り、右を指差した。
「この先に村がある。食べ物を少し持って来い。断れば……。」
先程の優しい目の面影もないほどの鋭い眼光で睨まれた彼女は、再び泣きそうになりながら黙って頷いた。
「ただし、俺のことを誰にも言うな。言った時点でお前を殺す。わかったな?」
彼女は必死にこくこくと頷いた。
「頼む。」
彼女は彼が指差した方向に歩き始めるが、五歩ほど歩いたところで彼女は足を止め、突然こちらを振り返った。
「あ、あの……。」
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