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あの丘で会いましょう

[326]  山本 知佳  2007-09-17投稿
プロローグ


貴方は覚えているのでしょうか。
あの日私は見知らぬ土地で迷子になった。その時私は貴方に出会い、初めて恋を知った。そして11年経った今でも、貴方を追い続けている。
私はあの帰り際の約束を忘れない。

『・・・また、会える?』
『会えるさ、きっと。』
『いつ?』
『・・・いつか』
『どこで?』
『何処かで。』
『じゃあいつか、この丘で会いましょう?』
『・・・うん。いつか・・・ね』




1.再会

山村 奏 16歳。

勉強だけが取り柄の16歳。高校生にしては真面目で、髪はロング。束ねておらず、下ろしてある。制服の着こなしは校則をきっちり守ってある。
だが、奏の家族構成、誕生日、血液型、性格、感情など、彼女についての生態全てが謎に満ちている。

奏はある場所に向かっていた。
昔、ある人に出会ったあの丘。
「−・・・」

奏は自分の目を疑った。
そこには、昔、この丘で知り合った男がいた。

「ん?」

奏に気付いたようで、男が顔を上げる。

「あ・・・」

言葉が出なかった。

「貴方は・・・?」

男が笑った。

「久しぶり。大きくなったね」

声も同じだった。涙が溢れてきた。
男が近付き、涙を拭った。

「私・・・」

今こそ想いを伝えなければ。

「信ちゃーん!」

丘の上で声がした。

「おー」

男が答えた。

彼女−・・・

奏は本能でそう感じた。

「じゃ またね」

仲良く肩を並べて歩いていく姿を奏は見送った。

−失恋・・・

初めて知った恋の味だった。

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