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夢の世界2

[557]  まいける  2007-09-22投稿
いや、人物という表現はおかしいかも知れない。
「私は、人々の夢を司る夢魔です。」
なんだか空の雲をかき集めて人の形にしたようなそれは、そう名乗った。
「む…夢魔?」
「そうです」
「望みを…叶えてくれるのか?」
「はい。夢の世界に送ってさしあげます。」
突然の事だったが、達也は何の躊躇も無くこういった。
「なら…なら一番最近の夢に俺を送ってくれ!」
「…?あれでよろしいので?」
夢魔は怪訝そうな様子で達也に聞き返す。
「ああ、頼む!」
達也は懸命な表情でそういった。
すると夢魔はさらに怪訝な表情で、
「まあ構いませんが…夢の世界からは、私の気が向かない限り戻れませんよ。それでもいいですか?」
「何度も言わせないでくれ!俺は今の世界じゃ退屈なんだ!」
そういうと、夢魔は急にすっきりした様子で、
「わかりました。次に寝て、そして起きたら夢の世界になるよう用意をしておきます。」
「やった!ありがとう夢魔!」
そういうと達也は軽やかな足取りで塾に向かった。
「なるほど、今の世界は退屈だから、もっとスリリングな世界に行きたかったんですね」
そういうと夢魔は、早速準備に取り掛かった。
達也は、塾に着くや否や、自分の席につき、寝始めた。
「やだ達也君、講義始まる前にもう寝てるわよ」
「次のテストで取れないとやばいって言ってたのに…」
ふん、そんなのこれから夢の世界に行ったらどうにでもなることだ!
そう思いながら、達也は、深い、深い、眠りに、着いた。

「冗談、じゃない!」
達也は息を切らしながら全力で走った。
「俺は、こんな、夢、見て、ないぞ!」
達也は止まるわけにはいかなかった。
なんせ、本や映画でしか見たことのない、ティラノサウルスが襲って来ているのだから。
「くそっ、あの、野郎!嘘、つき、やがって…」
そう言っている間にも、達也とティラノサウルスの差は縮まっていって…
「う…うわああああ!」
達也は知らなかったが、人間は見た夢の全てを覚えているわけでは無く、見た夢のほとんどは忘れてしまうらしい。
そう、達也は見ていたのだ。ティラノサウルスに襲われる夢を。あの最高の夢を見た後に。
6時を告げる携帯に、起こされる直前に。

感想

  • 7713: ブギーの現れない歪曲王 [2011-01-16]

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