ペイルブルー(1)
会社の飲み会の帰り、僕たちは二人きりになった。
「今日さあ、旦那出張でいないんだ」
美沙子はそう言って僕の腕に抱きついてきた。僕はホロ酔いで美沙子は思い切り酔っていた。
「飲み足りないってこと?」
「そういうことぉ」
僕たちは目の前にあったショットバーに入って、テーブル席の壁際に並んで座った。美沙子は僕の肩にもたれかかって今にも眠りそうだった。
「おい、寝るなよ」
「大丈夫だよ。寝ないよ」
「帰ったほうがいいんじゃないか?」
「いいよ。帰っても。奥さん待ってるんでしょ。帰りなさいよ。私一人で飲んで帰るから。自分が帰りたいんでしょ」
美沙子は目を閉じたまま僕に毒付いた。
「何言ってんだよ。俺は大丈夫だよ」
「…あのさ、私ね、結城君のこと好きだよ」
「な、何言ってんだ。お前おかしいよ。悪酔いしてるよ」
美沙子は顔を上げて、僕の方に向き直った。
「ホントだよ。会社入った時から、研修の時からずっと好きだよ」
「なんなんだよ。急に。お前やっぱ酔いすぎ」
髪が少し乱れ目元の赤らむ美沙子は妙に色っぽかった。僕は美沙子から視線を外した。
「今でもだーい好き」
そう言うと、美沙子はまた僕の肩にもたれかかった。香水の匂いが揺れて僕の頭に染み込んだ。僕は何も答えなかった。
僕と美沙子は同期だ。美沙子は同期の男たちにとってアイドル的な存在だった。もちろん僕も好意は寄せていたけど、学生時代から付き合っていた今の妻がいたので、好意が恋愛感情に変わることはなかった。その後美沙子は見合いで結婚。当時独身だった同期の男たちを随分と悔しがらせた。
甘酸っぱい沈黙が続いた。
「そろそろ帰らないか。もう1時過ぎだ」
「そうね。帰らなくちゃね。迷惑だよね」
「そんなんじゃないけど…」
「うん。帰ろ」
「そう。送るよ」
「大丈夫。一人で帰れる」
「そんな回り道じゃないから」
僕たちは店を出ると、タクシーのいる大通りに向かって歩き始めた。
「ごめんね。さっきは変なこと言っちゃって」
「いいよ。悪く思うようなことじゃない」
「…」
「美沙子に好きだって言われて嫌がるやつはいないよ。光栄だよ」
「…」
美沙子は無言のまま僕の腕に抱きついてきた。少し震えていた。
「どうした?」
美沙子は泣いていた。
僕は立ち止まって美沙子と向き合った。
「今日さあ、旦那出張でいないんだ」
美沙子はそう言って僕の腕に抱きついてきた。僕はホロ酔いで美沙子は思い切り酔っていた。
「飲み足りないってこと?」
「そういうことぉ」
僕たちは目の前にあったショットバーに入って、テーブル席の壁際に並んで座った。美沙子は僕の肩にもたれかかって今にも眠りそうだった。
「おい、寝るなよ」
「大丈夫だよ。寝ないよ」
「帰ったほうがいいんじゃないか?」
「いいよ。帰っても。奥さん待ってるんでしょ。帰りなさいよ。私一人で飲んで帰るから。自分が帰りたいんでしょ」
美沙子は目を閉じたまま僕に毒付いた。
「何言ってんだよ。俺は大丈夫だよ」
「…あのさ、私ね、結城君のこと好きだよ」
「な、何言ってんだ。お前おかしいよ。悪酔いしてるよ」
美沙子は顔を上げて、僕の方に向き直った。
「ホントだよ。会社入った時から、研修の時からずっと好きだよ」
「なんなんだよ。急に。お前やっぱ酔いすぎ」
髪が少し乱れ目元の赤らむ美沙子は妙に色っぽかった。僕は美沙子から視線を外した。
「今でもだーい好き」
そう言うと、美沙子はまた僕の肩にもたれかかった。香水の匂いが揺れて僕の頭に染み込んだ。僕は何も答えなかった。
僕と美沙子は同期だ。美沙子は同期の男たちにとってアイドル的な存在だった。もちろん僕も好意は寄せていたけど、学生時代から付き合っていた今の妻がいたので、好意が恋愛感情に変わることはなかった。その後美沙子は見合いで結婚。当時独身だった同期の男たちを随分と悔しがらせた。
甘酸っぱい沈黙が続いた。
「そろそろ帰らないか。もう1時過ぎだ」
「そうね。帰らなくちゃね。迷惑だよね」
「そんなんじゃないけど…」
「うん。帰ろ」
「そう。送るよ」
「大丈夫。一人で帰れる」
「そんな回り道じゃないから」
僕たちは店を出ると、タクシーのいる大通りに向かって歩き始めた。
「ごめんね。さっきは変なこと言っちゃって」
「いいよ。悪く思うようなことじゃない」
「…」
「美沙子に好きだって言われて嫌がるやつはいないよ。光栄だよ」
「…」
美沙子は無言のまま僕の腕に抱きついてきた。少し震えていた。
「どうした?」
美沙子は泣いていた。
僕は立ち止まって美沙子と向き合った。
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