マドレーヌをもう一度-第三章?
…宙空には響かない爆発音がいたるところで上がっていた。
「四機目…」
アラン・シェリー中尉は、この日の撃墜数を呟いて、補給のために母艦に一時帰投した。
明らかに王国軍が制宙権を握りつつある。アランは軽く舌打ちをして、愛機を降りた。 すぐに補給担当者が駆け寄って慌ただしく作業を始める。
「…味方は負けてるのか?」
アランは作業を指示するマークス軍曹に話しかけた。
「そうらしい」
一応こちらは向いたが、作業から目を離さない。アランはそんなことは気にせず、黙り込んで補給を待った。 「そういえば」
マークスが思い出したように言った。
「中尉は士官候補生でしたよね」
「…それがどうした」
アランに不吉な予感が走った。
「候補生あがりの撃墜王が墜とされたらしいです。それも四機がかりで…」
「だから誰なんだ?」
マークスはハッとシェリー中尉の方に振り向いた。その真剣な表情に、思わず息をのむ。
「確かグエンという名の…」
「それはグエン・ナムツェル中尉のことか」
アランは焦るように尋ねた。
「…補給完了しましたっ」
作業員から声が上がったが、アランはすぐに動かない。
「その名前だったと思います。まだ若い下士官の方だったのに…」
アランは黙って天井をみやり、やがて首を振ると機体に乗り込んだ。
「気をつけて下さいっ。ご無事で…」
マークス軍曹の声は 、しかし発進音に書き消された。
アランは自分が平静を保ってることが意外だった。
アジドとグエンの二人の友を亡くしたが、自分はまだ飛び続けなくてはならない。そのことへの責任感からだろうか。
だが、彼自身は気付いていなかった。自分の頬を、涙が伝ったことを…。
アランは、ケイトとケリーの無事を思いやった。
「五機目…」
そして、未だに戦いは終わらない。
…あれから数回の帰投を繰り返しつつも、アランはまだ戦っていた。
もはや心身の疲労はピークに達しようとしている。
その時だった。
彼の前を飛んでいた機体に、巡航艦の砲口が照準を定めたのが目に入ったのである。
何故それが目に付いたのだろうか。アランには、そのことを考える時間も余裕も無かった。
アランは無意識に、その機体と、射線の間に割り込んでいた。
閃光が、宙空に走った…
「四機目…」
アラン・シェリー中尉は、この日の撃墜数を呟いて、補給のために母艦に一時帰投した。
明らかに王国軍が制宙権を握りつつある。アランは軽く舌打ちをして、愛機を降りた。 すぐに補給担当者が駆け寄って慌ただしく作業を始める。
「…味方は負けてるのか?」
アランは作業を指示するマークス軍曹に話しかけた。
「そうらしい」
一応こちらは向いたが、作業から目を離さない。アランはそんなことは気にせず、黙り込んで補給を待った。 「そういえば」
マークスが思い出したように言った。
「中尉は士官候補生でしたよね」
「…それがどうした」
アランに不吉な予感が走った。
「候補生あがりの撃墜王が墜とされたらしいです。それも四機がかりで…」
「だから誰なんだ?」
マークスはハッとシェリー中尉の方に振り向いた。その真剣な表情に、思わず息をのむ。
「確かグエンという名の…」
「それはグエン・ナムツェル中尉のことか」
アランは焦るように尋ねた。
「…補給完了しましたっ」
作業員から声が上がったが、アランはすぐに動かない。
「その名前だったと思います。まだ若い下士官の方だったのに…」
アランは黙って天井をみやり、やがて首を振ると機体に乗り込んだ。
「気をつけて下さいっ。ご無事で…」
マークス軍曹の声は 、しかし発進音に書き消された。
アランは自分が平静を保ってることが意外だった。
アジドとグエンの二人の友を亡くしたが、自分はまだ飛び続けなくてはならない。そのことへの責任感からだろうか。
だが、彼自身は気付いていなかった。自分の頬を、涙が伝ったことを…。
アランは、ケイトとケリーの無事を思いやった。
「五機目…」
そして、未だに戦いは終わらない。
…あれから数回の帰投を繰り返しつつも、アランはまだ戦っていた。
もはや心身の疲労はピークに達しようとしている。
その時だった。
彼の前を飛んでいた機体に、巡航艦の砲口が照準を定めたのが目に入ったのである。
何故それが目に付いたのだろうか。アランには、そのことを考える時間も余裕も無かった。
アランは無意識に、その機体と、射線の間に割り込んでいた。
閃光が、宙空に走った…
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