過去はもう戻らない −序章(1) 傷跡−
明日、か。
私は、ついていたテレビを何気なく消してみた。
それでも気持ちは落ち着かない。
やっぱり、この"傷"のせいなのかな…。
ソファにどさっと座って、左手を目の高さへ持ち上げる。
薬指に"傷"がある。
それに気付いたのは、いつのことだっけ。もう、随分前のような気がする…。
その"傷"は、傷というより、何かの"印"みたいで、気持ち悪かった。どこで、どんな理由で付いたのかも分からない―それが、何故だか怖かった。
「そんなことでビクビクするなんて、亜実らしくないじゃん。そのうちのびて、無くなるよ」―私の幼なじみで良き友である海岸千春はこう言った。
千春は将来の夢が弁護士で、凄く頭がよくて、頼りになる。
だから訊いたんだけど…。
「ね、ね、そんなことより、今度、奥地の森まで探検に行かない?もう、他のヤツラは誘ってあるんだけどさ。あとは亜実だけなの」 …おい、質問に答えろ。
しかも、もう決めてんのに、わざわざ訊くな。
「ん…まぁいいけど。いつ行くの?」
曖昧に承諾した。
「何言ってんの!明日行くに決まってんじゃないの!」
−ほーら出た。千春のお得意技、[決めたことはすぐに実行する]。私の"傷"のことなんて忘れられ、またもや冒険(千春の?
私は、ついていたテレビを何気なく消してみた。
それでも気持ちは落ち着かない。
やっぱり、この"傷"のせいなのかな…。
ソファにどさっと座って、左手を目の高さへ持ち上げる。
薬指に"傷"がある。
それに気付いたのは、いつのことだっけ。もう、随分前のような気がする…。
その"傷"は、傷というより、何かの"印"みたいで、気持ち悪かった。どこで、どんな理由で付いたのかも分からない―それが、何故だか怖かった。
「そんなことでビクビクするなんて、亜実らしくないじゃん。そのうちのびて、無くなるよ」―私の幼なじみで良き友である海岸千春はこう言った。
千春は将来の夢が弁護士で、凄く頭がよくて、頼りになる。
だから訊いたんだけど…。
「ね、ね、そんなことより、今度、奥地の森まで探検に行かない?もう、他のヤツラは誘ってあるんだけどさ。あとは亜実だけなの」 …おい、質問に答えろ。
しかも、もう決めてんのに、わざわざ訊くな。
「ん…まぁいいけど。いつ行くの?」
曖昧に承諾した。
「何言ってんの!明日行くに決まってんじゃないの!」
−ほーら出た。千春のお得意技、[決めたことはすぐに実行する]。私の"傷"のことなんて忘れられ、またもや冒険(千春の?
感想
感想はありません。