処刑生徒会長第三話・7
同日午後五時・都内V区H霊園―\r
供えの彼岸花を手に持ってバスを降りた梅城ケンヤは、真っ直ぐ霊園の門をくぐった。
左右を並木に挟まれた緩やかな石畳の坂道を登り、丘のてっぺん、ほぼ行き止まりの辺りに、それはあった。
彼の従姉妹・多聞堀ナツとその一家の墓のある一角だ―\r
様々な様式の墓石がびっしりと連なる一番奥・最も目立ちにくい場所にひっそりと彼女達は葬られていた。
『…………………』
途中で用意した水の入った手桶を足下に置いて、その墓を眺めた梅城ケンヤは、しばらく何も言えなかった。
誰も弔わない墓―\r
名前すら刻んでもらえない墓石―\r
そうだ。
イジメは今や死体にすら笞打つ―\r
心ないマスコミやそれに影響された部外者の悪質ないたずらや嫌がらせを避けるため、こう言う葬り方しか出来なかったのだ。
そして、イジメの余波を恐れた一族や親戚達も、この墓に参った例しがない。
ケンヤの両親すら、ナツの家族の【全滅】後、この話題に触れる事を極力避けている―\r
こうして墓参りに来るのは、だからケンヤしかいないのだ。
ケンヤを除けば、多聞堀一家の三人は、完全に忘れ去られた存在だ。
少なくとも表際は。
ケンヤは自分の両親や親戚を責めるつもりはなかった。
薄情だが現実的な判断だ。
だが、このままではいつまでたっても【死人に口なし】ではないか―\r
だからこそ、自分は生徒会長になって復讐を果たしたんだ。
ひしゃくを持って名の無き墓石に水をかけ、花と線香を供えながら、梅城ケンヤは大事な報告をした。
『ナツ姉さん、ケンイチ叔父さん、ミツ叔母さん―俺はやったよ。みんなの仇を射ったんだ―だからもう安らかに眠って良いんだ』
言いながら線香に火を付けると、爽やかな香りに満ちた煙りが立ち込め、ケンヤの顔と墓石を包む。
『だけど、まだこれで終わりじゃないよ』
今回の墓参りはただ果たされた復讐の報告だけのためになされた訳ではなかった。
新たな誓いを告げると言う、より重大な意味が込められていた―\r
『むしろこれからが始まりさ―イジメがある限りまた同じ事が繰り返される―だから俺は決めたんだ。もっと力と名声を付けて、悪いヤツを徹底的に裁くってね―だから姉さん達も見守ってくれ』
供えの彼岸花を手に持ってバスを降りた梅城ケンヤは、真っ直ぐ霊園の門をくぐった。
左右を並木に挟まれた緩やかな石畳の坂道を登り、丘のてっぺん、ほぼ行き止まりの辺りに、それはあった。
彼の従姉妹・多聞堀ナツとその一家の墓のある一角だ―\r
様々な様式の墓石がびっしりと連なる一番奥・最も目立ちにくい場所にひっそりと彼女達は葬られていた。
『…………………』
途中で用意した水の入った手桶を足下に置いて、その墓を眺めた梅城ケンヤは、しばらく何も言えなかった。
誰も弔わない墓―\r
名前すら刻んでもらえない墓石―\r
そうだ。
イジメは今や死体にすら笞打つ―\r
心ないマスコミやそれに影響された部外者の悪質ないたずらや嫌がらせを避けるため、こう言う葬り方しか出来なかったのだ。
そして、イジメの余波を恐れた一族や親戚達も、この墓に参った例しがない。
ケンヤの両親すら、ナツの家族の【全滅】後、この話題に触れる事を極力避けている―\r
こうして墓参りに来るのは、だからケンヤしかいないのだ。
ケンヤを除けば、多聞堀一家の三人は、完全に忘れ去られた存在だ。
少なくとも表際は。
ケンヤは自分の両親や親戚を責めるつもりはなかった。
薄情だが現実的な判断だ。
だが、このままではいつまでたっても【死人に口なし】ではないか―\r
だからこそ、自分は生徒会長になって復讐を果たしたんだ。
ひしゃくを持って名の無き墓石に水をかけ、花と線香を供えながら、梅城ケンヤは大事な報告をした。
『ナツ姉さん、ケンイチ叔父さん、ミツ叔母さん―俺はやったよ。みんなの仇を射ったんだ―だからもう安らかに眠って良いんだ』
言いながら線香に火を付けると、爽やかな香りに満ちた煙りが立ち込め、ケンヤの顔と墓石を包む。
『だけど、まだこれで終わりじゃないよ』
今回の墓参りはただ果たされた復讐の報告だけのためになされた訳ではなかった。
新たな誓いを告げると言う、より重大な意味が込められていた―\r
『むしろこれからが始まりさ―イジメがある限りまた同じ事が繰り返される―だから俺は決めたんだ。もっと力と名声を付けて、悪いヤツを徹底的に裁くってね―だから姉さん達も見守ってくれ』
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