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翼 10

[220]  2007-09-30投稿
志保里は手すりに足をかけ、向こう側に立った。
立ったというより手すりにかかとを乗せているだけだった。
両手を離せば、落ちる。
4階建て校舎。下にはコンクリート。

「愛してるよ。雄二」

「おい!?」

振り向けないけれど声で分かる。

「先生!!ひとつだけ聞かせて!私は遊びだった!?」

「何分けわかんねぇこと言ってんだ!?今助けるから!」

「来ないで!!二股ってなに!?そんな軽い話だったの!?」
「何言ってんだ?二股!?」

「里見さんと、付き合ってるんですよね」

雄二は全てを悟った。
自分の一番大事な人が騙されて死のうとしている。

「里見さんの嘘だ!!俺は初めてここに転勤してきた!!本当だ!」

「私…また騙されて…?」

「そのままじっとしてろ!」

雄二は志保里の手をつかんだ。
「動くなよ…」

「助け、助け…て」

志保里は雄二にすがりついた。
そのまま雄二は志保里を抱き上げて、屋上に戻したが、拍子に志保里の内履きは屋上から真っ逆様に落ちていった。

「先生ぇ!!」

「もう頼むから、どこにも行かないでくれ」

志保里を抱き締めた雄二は、里見への怒りと安堵でいっぱいだった。

「絶対助けるから、勝手にいなくならないでくれ」

それは雄二の願いだった。

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