仄かに香る夕焼け1
寝ている。ちょうどコスモスが咲く季節、わたしは、あの頃と同じようにここに寝ている。
同じように寝返りをうち、空を仰いだ。あの頃みた空はなかった。そこには、ただの空があった。
あの頃のわたしはこの空をどんな気持ちで眺めていたのか、わかりそうで、わからない。穴が空いたようで、ひどく悲しくなる。
ひとつ明確なのは、わたしが今見ているのは『ただの空』だ。南中した太陽が額に射し、コスモスから蜜蜂が離れる。空がゆれた。
『…ねえ、聞いてる?』
『あ、うん。聞いてなかった。何?』
『もぅ、ぼーっとしちゃって、何考えてんだか。あのね…』
私は大学生だ。親しい友人もいるし、単位だって無難に取ってきた。ごく一般的な学生。
将来何になりたいという訳でもなく、大学は出た方がいい、という自分なりの解釈の上に入学した。
恋愛も人並みで、心から愛した人も少なからずいた。
ただ、常に何かが満たされていなかったのは確かだ。何が足りないのか、幾度か悩む機会はあったが、結局わからなかった。
同じように寝返りをうち、空を仰いだ。あの頃みた空はなかった。そこには、ただの空があった。
あの頃のわたしはこの空をどんな気持ちで眺めていたのか、わかりそうで、わからない。穴が空いたようで、ひどく悲しくなる。
ひとつ明確なのは、わたしが今見ているのは『ただの空』だ。南中した太陽が額に射し、コスモスから蜜蜂が離れる。空がゆれた。
『…ねえ、聞いてる?』
『あ、うん。聞いてなかった。何?』
『もぅ、ぼーっとしちゃって、何考えてんだか。あのね…』
私は大学生だ。親しい友人もいるし、単位だって無難に取ってきた。ごく一般的な学生。
将来何になりたいという訳でもなく、大学は出た方がいい、という自分なりの解釈の上に入学した。
恋愛も人並みで、心から愛した人も少なからずいた。
ただ、常に何かが満たされていなかったのは確かだ。何が足りないのか、幾度か悩む機会はあったが、結局わからなかった。
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