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DECEIT [突破] ?

[517]  etc.  2007-10-06投稿
 高級外来車のエンジンは元気一杯そのもので、アクセルを踏み込むと背中を伝わって、振動と凄まじい音が伝わってくるのがわかった。

 光には今何処を走っているのか、さっぱりである。

 ただ分かるのは海が見える事。

 既に雨はやみ、夕日が大きく紅蓮に輝いていた。

 今日は本当に迷惑な日だ。

 デートと偽って光に近づいて来た美青年が、光を護衛するためにCIAから送られて来た諜報部員。

 同じく諜報部員で、隣に座っている図体のやたらでかい、筋肉質の日本人男性。

 そして、先程まで女々しくかわいらしかったこのお嬢様が、悪態をついて狭い車内の中で足組をしている。

 車内は会話一つしなくなり、光のぶつぶつという独り言もエンジン音で掻き消される。

 『……私は……家に帰れるのかな……』

 光は頭の中でやたらと響くこの言葉が気に食わなかった。

 『……何よ……いつも一人だったじゃない……何淋しがってんのよ……』

 自分への励ましの言葉も絶大な影響を与えるでもなく、虚しく消えていった。

 どのくらい走り続けたのかは分からないが、急に車が止まった。

 無論、前に重心を置いたまま。

 「ぃ〜……!! 危ないじゃないのよ!!」

 「J、プランDだ」

 「……了解」

 二人が同時に頭を縦に振ったかと思うと、車は急発進した。

 無論、後ろに重心を置いたまま。

 今度は体勢が悪く、ドアポケットの突起に頭を強打。

 「ぃ〜……もう! 良加減にしなさいよ!!」

 先程の望への好意は何処へ行ってしまったのか、完全に憎しみへと変化していた。

 光がどうにか起き上がると、目の前には信じがたい光景が広がっていた。

 車が猛スピードで反対車線を突っ切っているのである。

 トラックが真正面から向かってきた。

 双方、クラクションを一生懸命に鳴らしている。

 ただでさえうるさいというのに。

 間一髪で、左へ曲がったのは赤いスポーツカー。

 「ちょっと!! あんた正気!?」

 しかし、不思議な位にガードレールや車にぶつからない。

 しかも、望は片手で携帯電話を持っている。

 「緊急事態発生!! 繰り返す! 緊急事態事態発生!!」

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