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終身刑

[359]  おさむ  2007-10-10投稿
帰ってきたらいなかったんだ

君だけ専用の水槽のどこにもいなかったんだ

みんなのいる水槽にもいなかったんだ

いつも僕が帰ってきたら近くにきてぱくぱくしてたのにいなかったんだ

何にも入ってない水槽に水だけが入ってて

静かになっていて


一番色が薄くて大きくてかわいい金魚は

何日も餌をあげなくても元気なくせに

みんなと一緒にいると一番最初に全部餌を食べてしまって

みんなにあげようとしないし

仲良くできないんだ



僕がどんなつらいことがあった日でも

遊び惚けて何日も家空けても

僕が帰るのをいつまでも待っててくれたんだ

一人じゃ寂しいだろうなって考えた僕がバカだったんだ

ずっと君一人かわいがれば良かったんだ

仲間なんていらなかったんだよね

ごめんね

命を粗末にして僕は罪深い人間だよね

殺されても文句は言えないよね


君と過ごした一年は思い出がたくさんあって

一人暮らしをしてた時だって君がいたから寂しく無かったし

みんな君をかわいがってくれたんだ


明日から君がいない生活が待ってると思うとやりきれないよ



僕は君の埋められた公園に行って


滑り台に寝転んで


星を見たんだ


僕には見えたよ


月と木の枝の間の星が


何重にもなって流れたのが


確実に僕の大事なものは砂つかむみたいに零れてるんだ

僕の大好きなものは

どんどん零れてく

知っていたんだ

線と線が交わったところがたまたまの出会いで

すれ違ったり

波線でたまたまおなじところで何回も出会ったり

それだけなんだってことはわかっているんだけど

君と僕はそんな偶然だけじゃなくって

僕が君の線を無理矢理ひっぱって

消しゴムで薄く薄く消してしまったんだ

すごい濃くて

何度も消えそうになりながらも消えなかったのに


僕がとどめをさしたんだ


君の病気を知った時

冗談だと思ってたんだよ

塩浴させた塩がついてしまっただけだと思っていたんだ

こんな思い違い許されないなら


許してくれなくていい


僕は一生十字架を背負うんだ


命は全て尊く


ゴキブリや蟻も金魚も犬も人も変わらないんだ


僕はきっと終身刑だ


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