銀河大戦記
…銀河暦三○七年九月一二日、アカイア公国の首都ブルガールにある公王宮殿では、重臣を集めての御前会議が開かれていた。
惑星ハーデンを武力占拠されたことへの再三の抗議に対し、イオニア王国の外交文書が届いたためである。
「…それでイオニアはなんと言ってきてるのだ」
現公王のクラーク・アファームが尋ねた。
「後日、対価をもってこれを支払う、と言っております」
外務大臣のファウラーが言うと、各面々に驚きと怒りの表情が浮かぶ
「馬鹿な!」
「有り得ん!」
勢いに任せた発言に冷や水をかけるように、首相のヴァイデンが、発言した。
「ではどうする?反抗か、それとも要求を認めるか」
「…ファン元帥はどう思う?」
公王クラークは、甥の軍司令官に尋ねた。
一同の視線が彼に集まった。
「認めるかどうかは別として…」
指名されたジョン・エリオット・ファン元帥はゆっくり切り出した。
「戦うには戦力が不足しています。それでも戦うならば、ドーリア連邦と軍事同盟を結ぶ他ありません」
一同にさらに驚きの声が上がる。
「そんなことが可能なのか?」
「可能でしょう」
ファンはその容姿と同じ様に秀麗に頷いて答えた。
「いま連邦は単独で戦うのが困難な状況にあります。だから我が国との同盟は、願ってもないことなのです」
ファンが周囲をみると、一同じっと聞き入っている。
「さらに今回の事件で被害を受けたセムナーン財閥の経済的支援も得られるでしょう。さらに…」
「さらに?」
クラークは続きを促した。
「皇帝陛下におかれましても、今回の事件にはお怒りになっていると聞きました。大義名分もたちます」
「元帥は…」
ヴァイデン首相が発言した。
「開戦すれば勝算があると?」
ファンは頷いた。
「全ては緒戦にかかっていますが、うまくいけば短期の決戦で敵を星河の対岸に封じれるでしょう」
星河とは、王国領を通る小惑星帯のことだ。「…よし」
クラークは暫く黙っていたが、再び口を開いた。
「開戦の準備を進めよ。ファン元帥は最高司令官に任ずる」
…午後五時のことだった。
ファンは宇宙省に戻り、幕僚を集めて決定を伝えた。
後に「ファン軍団」と呼ばれる、優秀だが個性的な面々である。
宇宙省内部は、忙しく動き出した。
こうして実質的に休戦状態にあった銀河に、再び戦いの兆しが現れ始めたのだった…
惑星ハーデンを武力占拠されたことへの再三の抗議に対し、イオニア王国の外交文書が届いたためである。
「…それでイオニアはなんと言ってきてるのだ」
現公王のクラーク・アファームが尋ねた。
「後日、対価をもってこれを支払う、と言っております」
外務大臣のファウラーが言うと、各面々に驚きと怒りの表情が浮かぶ
「馬鹿な!」
「有り得ん!」
勢いに任せた発言に冷や水をかけるように、首相のヴァイデンが、発言した。
「ではどうする?反抗か、それとも要求を認めるか」
「…ファン元帥はどう思う?」
公王クラークは、甥の軍司令官に尋ねた。
一同の視線が彼に集まった。
「認めるかどうかは別として…」
指名されたジョン・エリオット・ファン元帥はゆっくり切り出した。
「戦うには戦力が不足しています。それでも戦うならば、ドーリア連邦と軍事同盟を結ぶ他ありません」
一同にさらに驚きの声が上がる。
「そんなことが可能なのか?」
「可能でしょう」
ファンはその容姿と同じ様に秀麗に頷いて答えた。
「いま連邦は単独で戦うのが困難な状況にあります。だから我が国との同盟は、願ってもないことなのです」
ファンが周囲をみると、一同じっと聞き入っている。
「さらに今回の事件で被害を受けたセムナーン財閥の経済的支援も得られるでしょう。さらに…」
「さらに?」
クラークは続きを促した。
「皇帝陛下におかれましても、今回の事件にはお怒りになっていると聞きました。大義名分もたちます」
「元帥は…」
ヴァイデン首相が発言した。
「開戦すれば勝算があると?」
ファンは頷いた。
「全ては緒戦にかかっていますが、うまくいけば短期の決戦で敵を星河の対岸に封じれるでしょう」
星河とは、王国領を通る小惑星帯のことだ。「…よし」
クラークは暫く黙っていたが、再び口を開いた。
「開戦の準備を進めよ。ファン元帥は最高司令官に任ずる」
…午後五時のことだった。
ファンは宇宙省に戻り、幕僚を集めて決定を伝えた。
後に「ファン軍団」と呼ばれる、優秀だが個性的な面々である。
宇宙省内部は、忙しく動き出した。
こうして実質的に休戦状態にあった銀河に、再び戦いの兆しが現れ始めたのだった…
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