君と人魚
『ピーッ』
規則正しい笛の音。
次に聞こえる、水音。
…どうしよう。
焦りと共に、真っ暗な孤独を思い知る。
順番は私にまわってきていて、私は自然にスタートに立つ。
ドクンッドクンッ
心臓が早い速度で脈打っている。
『ピーッ』
それでも笛は鳴って。
反射的に水に飛び込むと肌には心地良い水の感触があたった。
速く。
速く泳がないと。
頭の中はそれだけ。
体中はその信号を受け取って、精一杯に動く。
もう少し。
あと、ちょと。
ターンを決めて、あと少しの所でゴールの時。
誰かが私の腕を掴んだ。
…誰?
水から引き上げられて。
顔を上げると。
アイツがいた。
「いやぁぁぁあぁぁ!」
「はぁっ…はぁ」
時刻は午前7時。
目覚ましは、それを煩い音で教えている。
「…夢、か」
ホッと息をつく。
目覚ましを止めて、カーテンを開くと朝日が差し込んだ。
「…今日から学校かぁ。よしっ頑張ろう!!」
真新しい制服に身を包み渚は家をでた。
私の名前は海野渚。
前は沖縄にいたんだけど訳あって東京に越してきたんだ。
私は二学期から、帝星学園に一年生として通う事になっているから転校生なんです!
「緊張する〜どんな学校だろう?」
私の家から学校まで徒歩で20分はかかるから、今日から自転車登校。
沖縄では歩いて5分で学校だったりしたから何だかウキウキだね☆
よそ見をしながら、学校までの風景を楽しんでいると何かに激突。
「いったぁー」
「いてぇ…」
低い声が聞こえた。
ふと、顔を上げる。
そこには、荷物をぶちまけた男の子がいた。
「うわぁぁっごめんなさい大丈夫?!」
「…大丈夫なわけねぇだろ?」
「うっ…すっすみませんでしたぁ!」
急いで荷物を拾って、彼に差し出すと勢いよく取られた。
マジで怒らせたぁ〜;
チラリと彼の顔を盗み見てみた。
転んだ時には顔を伏せていたからきちんと見ていなかったのだ。
うわぁ〜!
彼は今時に髪をセットしていて、着崩した制服は厭味な位似合っていた。
顔はありえない程に綺麗に整っていた。
これが、彼。
橘拓哉との出会い。
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