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DECEIT [突破] ?

[393]  etc.  2007-10-12投稿
 Jは普通、ピントが合わないであろうその小型の望遠鏡を通して、約?km後ろの悲惨なバンの周辺を見つめていた。

 「嘘だろ? あんな中をくぐり抜けられるわけがない。 第一、二台ともほぼ引っ付いて走ってたんだぞ」

 望の言う通り、あの惨事から逃れる事は不可能と言っても過言ではないだろう。

 しかしJの確認するかぎり、視界にはもう一台のバンが見て取れなかった。

 「……危険は無くなったんでしょ?」

 「……確認する」

 腑に落ちない望は携帯を耳に当て、大きな声で通信を再開する。

 「車両の内、一台を潰したがもう一台が見当たらないらしい。 至急、ヘリでの確認を要請する」

 『……既にヘリコプターが事故現場に向かっています』

 「衛星からの画像で確認は出来ないのか?」

 『……それが、何らかの影響で衛星との通信が行えないのです』

 望とその会話ををイヤホンで聞いていたJの眉間にシワがよったのを、光の目はのがさなかった。

 「……どういうことだ?」

 『……ただ今、総出で調査と復旧に当たっています。 ただ一つ言えることは、外部からの影響では無いということです』

 「……そうか。 ……何か分かったら連絡してくれ」

 『……例により、事故ということで証拠をとめておきます』

 そのまま電話を切った。

 まだ息の荒い光を乗せた車は屋根が戻され、元のペースで走り始めた。

 「さっぱりだ。 訳がわからん」

 望が愚痴をこぼす。

 「とにかくプランDに変更だ。 目的地をアメリカに移す」

 光は耳を疑った。

 「ア、アメリカ!?」

 「悪いが長旅になりそうだ」

 自由の国、アメリカ。

 光にとってそんな記述とは裏腹に、今の米国は荒れているという認識でしかなかった。

 「……もう好きにして……疲れた……」

 「襲撃が計画的なものだとしたら、目的地もばれている可能性があるかならな。本当にすまない」

 そんな言葉も光にはただの”音”でしかない。

 横では使い終わった銃を丁寧にしまっているJがいた。

 「……武器がそんなに好きなのかしらね…」

 超高速回転をしている車の大型エンジンと共に、光の声は夕日に沈んでいった。

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