楽園
彼等は 行ってしまった
何時もと何一つ変わりはなかったのだ。私の指が描いた緑は生い茂り、私が息を吹きかけた動物達は皆飛び回り、
何一つ不自由はなかったのだ。
そして彼等も、私に微笑んだ。
「ほら 貴方の描いた生命達はこんなにも輝いている」
彼女は笑い
「貴方が描いた私達はこんなにも幸せだ」
彼は笑い
私も笑い、孤独という悪はいつの間にか去っていた。
幸せだったのだ
何故、と呟く声が虚しく空を漂う。
何故 入り込んだと
何故 教えたと
何故 裏切った と。
あの悪しき生命のせいだけではない。彼女があれを食し、彼が彼女に近づき、そうして二人が私を裏切ったのだ。
「御免なさい 貴方の事は愛していました」
「私達はもう去ります だけど 本当に貴方を愛していました」
今更、と呟く声は枯れてしまった。もしかしたら彼等を作った私が悪いのかもしれない。
孤独 以外を知ってしまった
私が 彼等に造られてしまった
こんな思いは 知らなかったのに
今更、と新たな感情に戸惑い 苦しみ 崩れ落ち ようやく愚かだったと気づいた私は必死に乾いた唇を操り 再び声を漏らすのだ
「彼等は 行ってしまった」
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