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携帯白書 (2)

[326]  リッキー  2006-03-19投稿

「携帯の中って・・・」

夏菜は右手に握られていた携帯電話の在を確かめた。
そして、目の前に居る少年に目を向け直した。

「携帯電話の中の世界。お前住みたいんだろ?
 だから今ココにいるんじゃねぇか。」

「・・・へ〜。」

「お前変わってるな。」

「何が。」

「初めてココに来た奴らはそんな風じゃなかった。」

「・・・何が言いたいの。」

「お前が変わってるという事だ。」

「あっ、そ。」

少年の偉そうな態度に無駄な感情を抱く事も無く、
夏菜は自分でも信じられないほど落ち着いていた。
辺りには、まるで人々が想像しているあの世のような花畑が広がっていた。
けれど、地についている左手に、草の感触は無い。

「ここはバーチャルの世界なんだよ。本当はなぁんもねぇの。」

少年が夏菜の考えを悟ったかのように言った。

「色々訊きたいことがあるんだけど。」

「どーぞ。オレに答えられる範囲でな。」

「アンタの名前は?」

「春永 コスモ」

「日本人?」

「父親は な。訊きたい事はそれだけか?」

「急いでんの?」

「いや、訊きたい事がある。」

「んじゃあどーぞ。私の答えられる範囲で。」

コスモが発する質問は、真剣な物ばかりだった。
両親はこの事を知っているか、元の世界に戻りたいと思っているか、
実はこの世界の事を知っていたか。などなどだ。
これ等の質問の答えは全てNOだった。コスモは尋ねた。

「なぜ、元の世界に戻りたくないんだ?」

夏菜は決心したかのように、自分の「今」をコスモに伝え始めた。

〜続〜

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