仮想現実
「お早う由貴」
「お早う俊樹」
いつもと同じ挨拶を交わす。俊樹は柔らかく微笑む。
格好いいなぁ…
私は由貴。俊樹と同じ18歳。そして今、生まれて初めての恋をしている。
「由貴…今日も可愛い」
俊樹の声に私の頬が紅潮する。この声はズルい。少し低めの声で、可愛いだの綺麗だのと私を誉める。
「俺、由貴の事大好きだから」
形の良い唇がそう告げる。私の頬がまた赤らむ。恥ずかしいけど、嬉しい。スラリと伸びた長身も、整った顔や少し茶色がかった切れ長の綺麗な瞳も全部私の。そんな贅沢な独占感が私を支配する。
「私…私も俊樹の事…」
『俊樹!ご飯だって言ってるでしょ!』
液晶の向こうの扉から、俊樹の母親が怒鳴りながら入ってきた。
『またゲームなんかやって!いい加減学校行きなさい』
『うるさいな。このソフト結構リアルなんだぜ』
『でもゲームでしょ。早く本当の彼女できないかしら』
母親の言葉に俊樹は反抗しながら私の前から立ち上がり、扉の向こうへ消えていった。
私は由貴。俊樹と同じ18歳。そう設定されている。でも俊樹への思いは本当。私は永く、永く彼を愛していくのー
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