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主夫のカガミ

[623]  つるだ かずひと  2007-10-18投稿
「ん…このご時世にレタス百円…さすがハロー、安いっ!」

すかさずチラシに赤ペンで丸を付ける。

「おーっと!こっちではトリモモ百グラム60円じゃないですかぁ?!なんてこったー!」


テレビでは朝のワイドショー。画面の左上には「主婦の叫び!!」というテロップ。一般の主婦が今怒っていることを投稿して、その再現VTRを紹介する毎週恒例のコーナー。

「『誰のおかげで飯食べれてるんだ?』ですって?
何様のつもりなの!!
こっちは安月給だから、毎日安いスーパーチェックして買い物に行ってるのよ!!
一回主婦やってみなさいよね!」

テレビに向かって激しく頷く私。横目でチラシを一瞥。

「分かるなぁ。たまの休日ぐらい料理でもしてみろっ!そこまで言わないから、せめて子供連れて公園でも行って来い!って話ですよねぇ。」

VTRにコメントしているのは、元モデルでカリスマ主婦として人気のR。

「その通りっ!よく分かってらっしゃる!!」
テレビに向かって語りかける私。


ピーッ、ピーッ、ピーッ、ピーッ。

「はい、はい。そう急かさないで頂けます?」

そう言って洗濯機に駆け寄る。

「あ〜あ、やっぱり取れてないや。あのガキ…雨の中でサッカーするなっつーの!」

そう呟きながら、染み取り洗剤を取り出す。


トゥルルルルッ!トゥルルルッ!

「もーっ、朝っぱらから誰よっ!」

受話器に駆け寄る私。

「はい、鏡ですが?」
ついワントーン上がる声。

「もしもーしっ!おっはー!」

「その声は絢音ちゃんママ?」

「今から舞ちゃんママのところで、お茶するんだけど一緒にどうかなぁと思って!行くよねぇ?」

「行く!行く!行くに決まってるでしょ!ちょっと待っててよぉ。今洗濯中なの〜!」

「じゃあ、30分後に行くね!」

「ちょっと、それじゃ洗濯終わらな…」

プーッ、プーッ、プーッ…。

「ちょっとぉ。染みが取れないっつーの!」


私の名前は鏡大輔、36歳。

2歳年上の妻・桃香と9歳の息子・隼太の3人家族。

趣味は料理、買い物、ママ友達とのお喋り、映画鑑賞、サッカー。

愛車はブリジストンの自転車、通称パパチャリ。

職業、専業主夫。

人呼んで、「主夫のカガミ」。


これは、主夫の主夫による現代社会で苦労されてると思われる数少ない主夫のための、未来への希望を込めたお話です。

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