FRAGILE DREAM 5
「あっと、私もう行かなきゃ。遅刻しちゃう」
フランカは腕時計に目を落としていった。
「遅刻?訓練は14時からだろ?」
「私、今日は研究所で仕事なの。訓練はでないの。仕事に行くついでに起こしに来て私が遅刻したんじゃ本末転倒だわ」
−なんだ、ついでか。そう思ってすぐ、俺ははっとした。ついでだったらなんだよ。むしろ勝手に部屋に入られて迷惑だろうが。
フランカが研究所の助手にかりだされるのは珍しいことではない。この研究所というのは、訓練施設に隣接するウイルスや最新技術を、主に兵器転用目的で扱っているところだ。先のチェルノブイリの事故もあり、デタントの流れの中、東側の劣勢は確実だが、未だあがこうとする連中もいる。フランカは父親がイタリアの物理学者だったらしく、そのせいかとても利発で、これまでにも様々な研究に貢献している。
「じゃあダンテ。11まであと30分しかないわよ。遅れないようにね」
「わかったよ」
フランカはドアのほうへ歩き出したが、ドアから1メートルほどのところで立ち止まり、振り返った。
「あの…ダンテ」
「ん?」
躊躇う様子を見せるフランカに少し驚きながら俺は顔を上げた。
「何でもない…」
フランカは細い声でそういうと、にっこり俺に笑いかけて、ドアの外へ消えていった。
「何なんだ…?」
俺は頭をくしゃくしゃかき、鏡をふと見てつぶやいた。
「やっぱり直してもらうべきだったかな…」
髪型に無頓着な俺には厄介そうな寝癖の有様だった。
フランカは腕時計に目を落としていった。
「遅刻?訓練は14時からだろ?」
「私、今日は研究所で仕事なの。訓練はでないの。仕事に行くついでに起こしに来て私が遅刻したんじゃ本末転倒だわ」
−なんだ、ついでか。そう思ってすぐ、俺ははっとした。ついでだったらなんだよ。むしろ勝手に部屋に入られて迷惑だろうが。
フランカが研究所の助手にかりだされるのは珍しいことではない。この研究所というのは、訓練施設に隣接するウイルスや最新技術を、主に兵器転用目的で扱っているところだ。先のチェルノブイリの事故もあり、デタントの流れの中、東側の劣勢は確実だが、未だあがこうとする連中もいる。フランカは父親がイタリアの物理学者だったらしく、そのせいかとても利発で、これまでにも様々な研究に貢献している。
「じゃあダンテ。11まであと30分しかないわよ。遅れないようにね」
「わかったよ」
フランカはドアのほうへ歩き出したが、ドアから1メートルほどのところで立ち止まり、振り返った。
「あの…ダンテ」
「ん?」
躊躇う様子を見せるフランカに少し驚きながら俺は顔を上げた。
「何でもない…」
フランカは細い声でそういうと、にっこり俺に笑いかけて、ドアの外へ消えていった。
「何なんだ…?」
俺は頭をくしゃくしゃかき、鏡をふと見てつぶやいた。
「やっぱり直してもらうべきだったかな…」
髪型に無頓着な俺には厄介そうな寝癖の有様だった。
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