枝と桜と。02
ボッ…という効果音で勢いよくついた火鉢。炭を入れすぎてしまったかと団扇であおいで落ち着かせた。
夕方にもなると少しずつ冷え込む。長袖のパーカー一枚では少々寒いくらいだ。雅文はそれにカーディガンというモコモコな服装で火鉢の前に座った。
「おじぃちゃん」
聞こえてきた声に振り返ると玄関で立ち止まったまま雅文を見つめる女の子がいた。
「マユリか?どうしたんじゃ」
雅文はこっちにこいと手招きした。マユリは素直にそれに応じて笑顔で雅文の横に並んで座った。
「おじぃちゃんに会いにきたんだよ」
屈託のない孫の笑顔に胸は弾むもので。雅文はその頭を優しく撫でてやった。
近くに置いてあった毛布で包んでやればマユリは温かそうに丸くなった。雅文はその肩を抱きしめた。小さな、小さな肩だった。
「…ママがね?おじぃちゃんには会っちゃダメって…」
子供の口から出るのは罪悪感のかけらもない言葉。だが、そんな子供故に話した単語一つが針のように鋭く胸を刺す。
「なんで?あたし、おじぃちゃんに会いたいよ?」
眉を下げて訴える孫に雅文は無理に作った笑みでその頭を何度も撫でた。
「…お母さんの言うことは、守りなさい」
「なんで?絶対?もう、おじぃちゃんに会っちゃダメ?」
そこ答えを口にするのは何よりも辛い。雅文はマユリの肩を抱き寄せてその名を小さく呼んだ。
「じじぃは永くない…お母さんの言うことを聞きなさい」
マユリはわからないよ、と何度も繰り返していた。雅文の目には涙が溜まっていた。
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