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一陣の風 「夢見る少年と異端の紅い十字架?」

[343]  姫乃 真咲  2007-10-28投稿
距離にして100メートル…
互いに相手の顔を判断できるような距離では決してない。
しかし、2人とも相手が標的だと疑ってかからなかった。
この絶妙な距離だったからこそ、互いにアタリをつけたのだ。

「キッド君…そのまま接近しようか。顔は出来るだけ俯いて、相手に見えないようにしてね…」
別の場所でモニタリングしているレイナードから通信機ごしに指示が飛ぶ。
魔術士としての初仕事、それが魔女と直接接触出来る囮捜査なんて願ったり叶ったりのはずだった…

たったひとつ、屈辱の女装を除いては…

齢16のキッドは、まだ未発達な身体をしている。簡単な変装に髪型を変えるだけで、遠目には女性に見違える程だった。
(恥ずかしい…死にたい…)
激しい程の後悔にかられながら、標的の男に一歩、また一歩と近付く。

距離にして50メートル…
流石に目のいい人なら、このぐらいの変装は見破ってしまうかもしれない。
より深く俯き、上目使いで相手を見遣るキッド。
その仕種が、魔女をより興奮させる。
男の歩みが小走りに変わる。

距離にして10メートル…!
もはやごまかしは効かないだろう。
しかし極度の興奮は、目を曇らせる。
魔女の男は未だ、キッドの女装を見破れないでいた。

通行人の減少に伴い、まわりに一般人はいない。
そして何よりか弱い獲物だと、キッドを断定して疑わない男。
被害を最小限に抑え、魔女を捕える千載一遇のチャンス。
キッドは両の手に、意識を集中させた。





「魔術を切る魔術!?」
「魔術を切る…と言うと、語弊があるかも知れませんが。刀や剣の周囲にアンチマジックフィールド、魔術現象を存在出来ない空間を作り出すんです。すると、魔術的干渉を全て無効果して物理的攻撃を加えられる…て、感じなんですが…」
キッドの説明を黙って聞く。
「…つまり、君はAMフィールドの形成と安定化、及び魔術現象の否定確立が可能だと言うのか?」
「難しい話は分かりませんが…そういうことだと。」
「馬鹿な…、研修上がりの新人がどうこう出来るレベルじゃない…。ましてや、まだ誰も実現していない机上の空論だ…AMフィールドは…」
暫く小声で呟くレイナードは、
「…しかし、それが可能だと言うのなら、策はある!」
その言葉と扉を打ち明けた。

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