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龍と狼53

[341]  武藤 岳  2007-10-29投稿
「ソン、もうやめて!
お願いやから、人殺すの、もうやめて!」

「ソルミ、後、もう一度だけだ。それで、全てが終わる。」

「いやや!お兄ちゃんが死んで、ソンまで死んだら、私、どないしたらええんよ!」

ソルミの涙ながらの訴えをソンスンは優しく受け流した。

「ソルミ、必ず帰ってくる。だから、待っていてくれ」



ソンスンと、チャンホは倉庫を出て、急いでタクシーを捕まえると、空港へと向かった。



六.

テロ直後の、物々しい警備体制が敷かれている、ワシントンD.C.ダレス国際空港に着いた柳田は、真矢達と分かれて、単独行動に出た。

アイアン亡き今、イリーガルの柳田をサポートしてくれるのは、アイアンの妻と名乗る、アイリーンという女性だった。

アイリーンという名前は恐らく仮名だろうが、今の柳田には、そんな事は関係なく、彼女のサポートが不可欠だった。

訪米する前に柳田は、ある人物との面会のアポイントを取っていた。

柳田は、今回の活動を行う前に、どうしても会っておきたかった人物がいた。

それは、本来、今回の活動とは全く異なる世界の人物ではあったが、アイアンにマーク・・いや、見守る事を依頼していた人物だった。

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