涙の絆 8
それは、真夜中の出来事である。純は、深い眠りの中いきなり跳び起きた。純が目を覚ましたのは、二つある保護室の一つ、つまり純のいる隣の保護室である。そこから「日本は中国に勝ったぞ」と想像を絶する嬌声が聞こえたのである。その叫び声はかなりの間続いた。純は驚くより外ならなかった。嬌声が止んだのは、夜勤の看護士がやって来て純の隣人の患者に何事か声を掛け、筋肉注射を打ってから間もなくしてのことだった。 「ごめんね。坂木君、起こしちゃって、この患者さんは昔、戦争に行ってたんだ」看護士は、そう言って、またかと呟いた。
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