彼の恋人
修学館の文化祭が始まった。進学校の文化祭という訳で、近辺住民や受験生もお祭り騒ぎだ。
この文化祭の目玉は、英語科1年生の伝統である英語劇だ。みくの妹・名波は英語科の1年生。名波のクラスでは「おむすびころりん」を上演する。
2日を通して3回上演。1回目の上演では、博文と亜鶴達の姿があった。
英語で上演される童話が始まった。お爺さんが落としたおむすびが転がる音が英語で表現される。実は名波が語り手になっているのだ。
「声は聞こえども姿は見えない。恋人を探す気分だね」
州和が囁き声で博文を茶化す。
「恥ずかしいから黙ってろ!」
博文も囁き声で制止する。
一緒に観賞している小さい子供達が、名波の語りに合わせておむすびが転がる音の大合唱。賑やかな英語劇は拍手に包まれながら幕を降ろした。
博文達は、教室を出る瞬間まで気付かなかった。夏休みに、みくの家に押し掛けた博文達を温かく迎え入れた克彦も、英語劇を観賞していた事を……。
「もう博文君たら、ずっと僕に気付かないフリをしてたんだもん。裕介君らも見れば良かったのに」
克彦の声に博文はびびった。亜鶴達も、夏休み以来克彦とはご無沙汰していた。
「あ……確か、夏休みの……」
祥恵と顔を合わせながら、彩子は何とか思い出した。
博文は腕時計の時刻を見て顔が青くなった。サッカー部員が任されている会場警備の出番まで後2分になろうとしているのだ!
しかし、そこは抜かりない。ジャージ姿のまま英語劇を観賞し、その足で持ち場まで急いで事なきを得た。
名波が教室から出てきた。
「おー名波ー。さっき博文君も劇を見てたけど、大急ぎでいなくなっちゃった」
「あぁ、会場の見張りね。母さんも誘えば良かったのに、友達と温泉に行ってて明日まで帰らないんだもん」
この日は土曜日。桜庭学園はしっかり授業が行われる。日曜日は一月に1度の校内清掃があり、今回はみくのクラスが回ってきた。
「またしてもすれ違う、切ない片想い。くぅ〜、青春じゃない」
「んもー、亜鶴ってば桜庭の事はいいから。次、何処見て回る?」
祥恵に促されるように次の見所を思案する亜鶴だが……。
この文化祭の目玉は、英語科1年生の伝統である英語劇だ。みくの妹・名波は英語科の1年生。名波のクラスでは「おむすびころりん」を上演する。
2日を通して3回上演。1回目の上演では、博文と亜鶴達の姿があった。
英語で上演される童話が始まった。お爺さんが落としたおむすびが転がる音が英語で表現される。実は名波が語り手になっているのだ。
「声は聞こえども姿は見えない。恋人を探す気分だね」
州和が囁き声で博文を茶化す。
「恥ずかしいから黙ってろ!」
博文も囁き声で制止する。
一緒に観賞している小さい子供達が、名波の語りに合わせておむすびが転がる音の大合唱。賑やかな英語劇は拍手に包まれながら幕を降ろした。
博文達は、教室を出る瞬間まで気付かなかった。夏休みに、みくの家に押し掛けた博文達を温かく迎え入れた克彦も、英語劇を観賞していた事を……。
「もう博文君たら、ずっと僕に気付かないフリをしてたんだもん。裕介君らも見れば良かったのに」
克彦の声に博文はびびった。亜鶴達も、夏休み以来克彦とはご無沙汰していた。
「あ……確か、夏休みの……」
祥恵と顔を合わせながら、彩子は何とか思い出した。
博文は腕時計の時刻を見て顔が青くなった。サッカー部員が任されている会場警備の出番まで後2分になろうとしているのだ!
しかし、そこは抜かりない。ジャージ姿のまま英語劇を観賞し、その足で持ち場まで急いで事なきを得た。
名波が教室から出てきた。
「おー名波ー。さっき博文君も劇を見てたけど、大急ぎでいなくなっちゃった」
「あぁ、会場の見張りね。母さんも誘えば良かったのに、友達と温泉に行ってて明日まで帰らないんだもん」
この日は土曜日。桜庭学園はしっかり授業が行われる。日曜日は一月に1度の校内清掃があり、今回はみくのクラスが回ってきた。
「またしてもすれ違う、切ない片想い。くぅ〜、青春じゃない」
「んもー、亜鶴ってば桜庭の事はいいから。次、何処見て回る?」
祥恵に促されるように次の見所を思案する亜鶴だが……。
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