携帯小説!(PC版)

息子

[393]  エメ  2006-03-23投稿
 僕は、物陰に隠れるあの人の気配を感じていた。
 あの人って言っても誰だか分かってるんだけどね・・・

 僕の名前が知りたいのかい?
僕は僕。
あえて名乗らない。
だって、そうでしょ?!僕が仮に名乗ったって変わらないもの・・・
 まただ。
あの人はまるで僕に何処までも着いてくるみたいだ。
「迷惑」
漢字二文字で当てはめてみた。
そりゃ誰でも迷惑されたら怒るって知ってるよ。

 でも、あの人を可哀想に思う僕。

誰もが僕の事を見て、「あの子、可哀想ねぇ」と、呟く。
僕自信も「ヤダ」と、思ってた。
アイツの家族の方が僕にかけ寄って来て、教えてくれたんだ。
「僕、うちの娘はねぇ、障害者なんだよ。」 おばあさんが話してくれた。
「それでは、どうして僕を追いかけて来るんですか?」
僕は、疑問をぶつけてみた。
すると、おばあさんがよりいっそう、悲しそうな顔してこう言ったんだ。
「僕の事を10年前死んだ息子だと思ってるんだよ。本当、似てるねぇ。」
僕は、それを聞くと泣き出してしまった。
「どうして、死んだ、ん、で、ヒックッ、すか?」
なんとか聞いた。
「交通事故だよ。あの日は、ちょうど、あの子の誕生日だったっけねぇ。」
そこまで言うと、おばあさんも泣き出してしまった。

その事を話すとみんな泣いた。

そして、時が過ぎ―。僕は、今、介護の仕事をしている。
もちろん。
あの人の介護だ。
僕の名は昭太。
あの人の息子と同じ名前だった。

      (おわり)

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