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龍と狼76

[348]  武藤 岳  2007-11-05投稿
「あんたは、誰か連絡ができる人間はいないのか?」

ソンスンは急に質問をされ、困惑した。

だがソンスンは、何かを決心した表情になり、質問に答えた。

「大統領がいる」

「大統領?
何処の大統領だ?
まさかアメリカの大統領って言うんじゃないだろうな?」

柳田は、ソンスンを少し小馬鹿にした言い方をした。

「違う。韓国の大統領だ。」

柳田はソンスンの告白に、体が固まった。

「ちょっ、ちょっと待ってくれ!
あんた、イリーガル(非正規局員)なのに、大統領と直接連絡が取れる程のキャリアなのか?」

ソンスンに、柳田の動揺が伝わった。

「非常事態に限り、連絡を許されている。」

「あんたは一体、何の命令を受けて此処へ来たんだ?」

柳田はソンスンの瞳をじっと見つめて、結論を出した。

「よし、あんたを信じて、大統領に連絡を取ろう。」

ソンスンは頷き、携帯電話を取り出すと、電話を始めた。


韓国大統領に電話が繋がるまでの間、道路脇に停めている、柳田達を乗せた車の側を何台もの米陸軍の車輌が通過していった。

この光景を見て、柳田に一つの考えが浮かんだ。


「大統領。ハンです。」

ソンスンの声が聞こえた。

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