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野良猫の家?

[353]  unknown soloist.  2007-11-07投稿
ここは、ある国の地下施設“野良猫の家”だ。
名称だけ聞いたら、“可愛らしい”だとか“のんびりしていそう”だとか、どちらかと言うと良いイメージを持つだろう。
しかしこの名称は、地上の人間に聞かれても問題のないよう、カモフラージュのために付けられたものだ。

この施設は、5人の科学者たちによって建設された。
科学者たちはここで、己の快楽のために実験を繰り返していた。
人体実験だ。この実験によって、多くの異種な人間が生まれた。
後頭部に目が付いている者、背中から腕が生えている者、頭が2つある者…私もその中の一人だ。
と言っても、私はまだマシな方だ。私は人間と狼の遺伝子を合成された種で、抜群の嗅覚・聴覚と尾が生えていること以外は、普通の人間と外見的には変わりない。
私はサヤと名付けられ、施設の中にある寮のような所で生活している。

ある日、私は暇潰しに施設の中を散歩していていた。
ある廊下の突き当たりまで進んだとき、壁に猫の絵が描かれているのを見付けた。
下手な絵だ。一体誰が描いたのだろうと不思議に思ったが、私は引き返して散歩を続けた。
しかし、よく見ると至る所に猫は描かれていた。
そして見付けた。今まさに壁に猫を描いている少年を。
「ねぇ?」
「わぁ!び、びっくりしたぁ〜…」
少年は驚いて、鉛筆を取り落とした。
「何してるの?」
「猫!描いてたんだ!野良猫!」
「野良猫?」
「うん!かわいいでしょ?」
「う〜ん…可愛い、かな?どうして野良猫なの?」
「野良猫はジユウだからだよ!」
「ふ〜ん…」
私は少年を観察した。普通の人間に見える。私と似た種なのだろうか?しかし、尾が付いているわけでもない。
「君は被験者なの?」
「うん!ボクはハルキだよ!お姉ちゃんは?」
「私はサヤ。でも君、普通の子に見えるけど…」
するとハルキは、私の手を掴んで自分の頭に乗せた。
何だろうと思ったとき、ようやく私は気付いた。ハルキのふわふわの黒髪に隠れている、小さめの動物の耳に。
「猫の耳だよ!」
「じゃあ君、人間と猫の…?」
「ハーフだよ!」
ハルキは、にっこりと笑った。何故こんなに明るいのだろう。被験者は皆、自分の姿に絶望し、屍のようになってしまっているのに。
しかしハルキの笑顔は、ハルキの描いた野良猫よりもずっと可愛かった。
少し話した後、またね、とハルキに手を振り、私は自室に戻った。

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