最悪の友人
学生の俺は毎日毎日似通った、普遍で平和な日々を送っている。
逆に云えば変化の無く退屈な日々。
なんとなく、俺は友人に愚痴ってみた。
「何でこう退屈で変わらないんだ、この日々は。死にそうだよ全く」
ただ愚痴った相手が悪い、変人まがいな親友の晴也である。
「ふっ、ゆとり房が」
云いつつ鼻で笑う晴也に、ムカつきを覚える。くるくると万年筆を指で回す晴也に、反論する。
「晴也、君は毎日が変わらなくて退屈だとは思わないのかい?」
「退屈はともかく、そもそも君は世界が変わらないと思っているのかい?何を馬鹿な。こうしている間にも石油の価格は上昇しているし、宇宙は絶えず膨張している。
いつかのCMじゃ人間の体の水は何週間かで全部入れ替わるなんて云ってたじゃないか」
「そうじゃ無いよ。目に見えて体感できる変化が欲しい。そんな広大な宇宙や、原子の世界なんてどうでも良い!石油価格なんてクソくらえさ!」
当然だ。ガソリンのレギュラー価格が幾ら上昇しようが車を持っていない俺には関係ない。
「自分に関わることしか頭に無いのか、これだからゆとり層は困る。
そうだ、」
云うなり、晴也は、
手に持っていた万年筆を、俺の首に目掛けて一閃に凪ぎ払った。
「なぁあぁぁ!?」
半秒遅れて俺は叫び、首に痛みを感じる。
「心配いらないよ。皮一枚えぐっただけだから。」
「てめぇ!」
未だ涼しい顔の晴也の、胸ぐらを掴み上げると、殴りかかる寸前である。
にも関わらず、晴也は冷ややかに、
「何か変化はあったかい?」
と尋ねて来た。
萎えた俺は、晴也を解放し、
「……、心拍数が上がった。後、お前への信頼は下がった」
と云ってやる。
「そう、それは良かった」
晴也はようやく、ニカっと笑い、
「後何cmか突き刺したら動脈だったね。
でもね、今のと同じ現象は常に行っている。
ただ、何mか、何kmか、要するにどの位距離があるかの違いだよね。
そういうことさ」
恐ろしいことを云いやがる。
ただ、これだけは改めて確信できた。
「やはり、晴也、貴様は最悪の友人だ」
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