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LASTSUMMER#21 『天堂寺翔』

[527]  SETTARMEN  2007-11-09投稿
朝山中との練習試合が終わり、エース天堂寺は自転車で帰宅した。




翔の父親である茂(シゲル)は白羽高校で甲子園に出場したことのある名投手。




しかし、若くからスター街道を走ってきた茂は高校卒業と同時に結婚、そして不倫、離婚という波乱の人生を歩んできた。

そして今では、ギャンブルに酒というどうしようもない父親になってしまったのだった。


その茂が翔が帰ってくるなりこう言った。


茂『おい!翔!今帰ってきたのかぁ?酒買ってきてくれぇ』



茂は既に酔っ払っている。かつてのスターの面影はない。



ショウ『酒ぐらい自分で買ってこい!大体今夕方だぞ!いつまで飲む気だ!!』



そう吐き捨てると翔は二階にある自分の部屋に上がって行った。



翔は煙草に火をつけ、物思いにふけった。




翔(何なんだよ!親父は。昔はよく野球を教えてくれたのに…会社辞めたらギャンブルに酒かよ!)



翔の野球センスは紛れもなく父親から受け継いだものだった。



と、同時に翔が不良になったきっかけも父親だった。




小学生の頃父親が不倫をして、母親が家から出ていってしまった。



母親の愛情を知らないまま思春期を迎えた翔は筋書き通り不良になってしまったのだった。




翔(親父なんかいなくても俺は生きていけるようになりてぇ。つ〜かもうこんな家なんか居たくねぇ)



翔は煙草を吸い終わると、着替えてグラブを持って外に出た。




翔(俺はあの情けねぇ親父を超えてやる!何が甲子園だ!俺は……)




翔は自転車で近くの公園まできた。




父親への怒りを込めながらも、翔は壁に向かってボールを投げ続けた。




翔(合宿なんざ楽勝で終わらせる!そして、春も夏もこれから俺の投げる試合は絶対に点はやらねぇ!)



力の入ったボールが公園の壁に跳ね返る。
その音だけが今は虚しく響いていた。




天堂寺翔。対朝山中戦
7回完投、11奪三振。





天堂寺は日が暮れるまでボールを投げ続けていた。





彼の速球はどこまで成長するのだろう。

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