MURASAME
平将門?
何も変わらない。
その姿、そして立ち居振る舞い、何もかも全て。
自分を育て、実子以上の愛情を注いでくれたやさしい瞳。
そして
一年前
鬼門を開き、幸司自身すらもその手にかけようとした、あの時の暗い輝きを持つ眼。それが幸司の記憶をフラッシュバックさせた。
「し…師匠…」
「一年ぶりだな…元気にしてたか?」
羅候の切っ先が揺れる。震えが止まらない。
幸司を構成する全ての細胞が目前に迫り来る巨大な鎧武者よりも、自分を悠然と見つめ、微笑んでいる可王に底知れぬ恐怖を感じていた。
「ふん!」
振り落とされた刃は幸司の予想に反し、鎧武者の顔面へとたたき込まれた。しかも可王の斬撃は先程羅殺剣で傷つけられた箇所を正確に射抜き、再び鎧武者を大地へ叩き伏せた。
「教えた筈だ、戦に於いて自らの道を見失う者に『士道』は歩めない、それが歩む道はひとつ…」
「『死道』ではなく…『士道』を歩め…」
それは可王京介が口癖のように幸司に言っていた言葉だった。幸司はそれを疎ましくも、可王と別れ妖庁に入った時も忘れず心の内に秘めていた筈だった。
「その様子では忘れていたな。今一度、俺がこの場で教えてやろう、立て」
可王は幸司が立ち上がるのを見届けると両手に刀を携え、構えをとった。
「吼えろ小鉄…舞え…政宗!」
二刀の刃が違う生物のように躍動し、跳躍する可王の肉体に合わせるようにその勢刃を踊らせた。
決して強力な一撃と云うわけではない。だが全ての斬撃がおり重なり鎧武者の強固な鎧を削った。
「羅殺断!」
二刀の刃から光が立ち上り、それが槍のように尖り、鎧武者の腕を貫いた。
鎧武者は巨大な怒号とともに貫かれた腕を振り回し可王の体を吹き飛ばした。
「ちぃ…やはり強固な物だな…幸司」
不意にその名を呼ばれた幸司は可王を凝視した。
「お前が今為すべきことはなんだ?」
可王の問いは幸司の心を貫いた。
「俺は…」
「俺は?」
「あいつを倒して帝都を護る」
何も変わらない。
その姿、そして立ち居振る舞い、何もかも全て。
自分を育て、実子以上の愛情を注いでくれたやさしい瞳。
そして
一年前
鬼門を開き、幸司自身すらもその手にかけようとした、あの時の暗い輝きを持つ眼。それが幸司の記憶をフラッシュバックさせた。
「し…師匠…」
「一年ぶりだな…元気にしてたか?」
羅候の切っ先が揺れる。震えが止まらない。
幸司を構成する全ての細胞が目前に迫り来る巨大な鎧武者よりも、自分を悠然と見つめ、微笑んでいる可王に底知れぬ恐怖を感じていた。
「ふん!」
振り落とされた刃は幸司の予想に反し、鎧武者の顔面へとたたき込まれた。しかも可王の斬撃は先程羅殺剣で傷つけられた箇所を正確に射抜き、再び鎧武者を大地へ叩き伏せた。
「教えた筈だ、戦に於いて自らの道を見失う者に『士道』は歩めない、それが歩む道はひとつ…」
「『死道』ではなく…『士道』を歩め…」
それは可王京介が口癖のように幸司に言っていた言葉だった。幸司はそれを疎ましくも、可王と別れ妖庁に入った時も忘れず心の内に秘めていた筈だった。
「その様子では忘れていたな。今一度、俺がこの場で教えてやろう、立て」
可王は幸司が立ち上がるのを見届けると両手に刀を携え、構えをとった。
「吼えろ小鉄…舞え…政宗!」
二刀の刃が違う生物のように躍動し、跳躍する可王の肉体に合わせるようにその勢刃を踊らせた。
決して強力な一撃と云うわけではない。だが全ての斬撃がおり重なり鎧武者の強固な鎧を削った。
「羅殺断!」
二刀の刃から光が立ち上り、それが槍のように尖り、鎧武者の腕を貫いた。
鎧武者は巨大な怒号とともに貫かれた腕を振り回し可王の体を吹き飛ばした。
「ちぃ…やはり強固な物だな…幸司」
不意にその名を呼ばれた幸司は可王を凝視した。
「お前が今為すべきことはなんだ?」
可王の問いは幸司の心を貫いた。
「俺は…」
「俺は?」
「あいつを倒して帝都を護る」
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