彼の恋人
泉の弟の大(まさる)は変わった少年らしい。
早熟なオタク趣味で読む漫画はサブカル系に偏っていて、お洒落にも必要以上に気を遣う。それでいて成績は中の上だ。
「単なるオタクはステレオタイプなセンスをしてるから、明らかにそれと分かる格好はしないのよ。モテないから。元々太い眉毛の手入れは朝飯前よ」
「それじゃ、化粧品は……?」
「高校入ってから解禁」
みくと泉の会話を立ち聞きしていた惇は、暁の前で溜め息をつく。
「ふー。俺達、一歩リードされちゃったね」
「何が?」
「俺、これでもメイクは一度もした事ないんだよ」
そういう惇の肌はとても清潔に保たれている。更に言葉を続ける。
「眉毛を細めないのは時代遅れだってよく言われるけど、ウチはメイク厳禁だから我慢してるだけなんだい!!」
桜庭の生徒のセンスがイマイチ垢抜けていないのは、こんな事情があるのだ。加えて少女趣味の制服では、確かに異性から遠ざけられるだろう。
大が入った青海では……。
州和が模試の結果を眺めてふて寝する。志望している国立大の合格判定がボーダーラインに及ばなかったのだ。
「關先輩!」
「ウ゛ア゛ッ!!」
場所は音楽室―吹奏楽部の溜まり場―である。青海の吹奏楽部はバリバリの体育会系で、体力に自信がないとついていけない点では修学館といい勝負をしている。
大はトロンボーンのパート練習に付き合って貰うために、州和を叩き起こしたのだ。
「野中、脅かすなよ。ん? パート練習? いいよ」
この日は数人のパート練習だけで2時間近く通した。
グラウンドでサックスのパート練習をしていた祥恵が、後輩と一緒に音楽室に戻ってきた。
「おーい、州和ゥ。帰りに本屋に付き合うぞー!」
時刻は5時半過ぎ。その時間に本屋に寄ろうというのだ。
後輩達の視線は州和と祥恵に集中する。
「誤解だ! 俺は黒崎さんのグループに引き込まれてるだけだ!」
必死に弁解する州和は明らかに照れている。後輩達の笑いは止まらない。
そんな様を見て、大は「寄り道も出来ない桜庭に入らなくて、本当に良かった」とつくづく思うのだった。
早熟なオタク趣味で読む漫画はサブカル系に偏っていて、お洒落にも必要以上に気を遣う。それでいて成績は中の上だ。
「単なるオタクはステレオタイプなセンスをしてるから、明らかにそれと分かる格好はしないのよ。モテないから。元々太い眉毛の手入れは朝飯前よ」
「それじゃ、化粧品は……?」
「高校入ってから解禁」
みくと泉の会話を立ち聞きしていた惇は、暁の前で溜め息をつく。
「ふー。俺達、一歩リードされちゃったね」
「何が?」
「俺、これでもメイクは一度もした事ないんだよ」
そういう惇の肌はとても清潔に保たれている。更に言葉を続ける。
「眉毛を細めないのは時代遅れだってよく言われるけど、ウチはメイク厳禁だから我慢してるだけなんだい!!」
桜庭の生徒のセンスがイマイチ垢抜けていないのは、こんな事情があるのだ。加えて少女趣味の制服では、確かに異性から遠ざけられるだろう。
大が入った青海では……。
州和が模試の結果を眺めてふて寝する。志望している国立大の合格判定がボーダーラインに及ばなかったのだ。
「關先輩!」
「ウ゛ア゛ッ!!」
場所は音楽室―吹奏楽部の溜まり場―である。青海の吹奏楽部はバリバリの体育会系で、体力に自信がないとついていけない点では修学館といい勝負をしている。
大はトロンボーンのパート練習に付き合って貰うために、州和を叩き起こしたのだ。
「野中、脅かすなよ。ん? パート練習? いいよ」
この日は数人のパート練習だけで2時間近く通した。
グラウンドでサックスのパート練習をしていた祥恵が、後輩と一緒に音楽室に戻ってきた。
「おーい、州和ゥ。帰りに本屋に付き合うぞー!」
時刻は5時半過ぎ。その時間に本屋に寄ろうというのだ。
後輩達の視線は州和と祥恵に集中する。
「誤解だ! 俺は黒崎さんのグループに引き込まれてるだけだ!」
必死に弁解する州和は明らかに照れている。後輩達の笑いは止まらない。
そんな様を見て、大は「寄り道も出来ない桜庭に入らなくて、本当に良かった」とつくづく思うのだった。
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