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叶わぬ想い(第1部)

[699]  ヨシ  2007-11-14投稿
不倫‥

みなこの響きに眉をひそめる。

やってはいけないこと‥そう‥頭では分かっていても、好きになってしまったら‥
誰も止められない‥


桜井 優。24才。

商社勤務2年目の彼女は、まさか自分が妻子ある人を好きになるとは思いもよらなかった。


‥中田 一世。30才。‥

優が惹かれた彼は、新進気鋭のエリート。

今や幹部候補として世界を駆け巡る商社マンだ。



少し肌寒くなったある日、二人はいつものカフェで待ち合わせをしていた。


仕事が忙しい彼に、優はいつも待たされる。

優はそれでも、愛しい彼を想いひたすら待ち続けていた。


‥カフェの扉が慌ただしく開いた‥

細身のスーツをさり気なく着こなした彼が、優しい眼差しで優を見つめながら席に近づいてきた。

優は満面の笑みで彼を迎える。


「ごめん、ごめん。お腹すいたよな?

近くの創作料理の店に行こう。
最近気にいってるんだ」


‥最近気にいってる‥他の子と来たのかしら‥

優は少しヤキモキしながらも、中田の勢いに圧され席を後にした。



店に入ると、隠れ家風なのか、質のいい和紙に包まれたライトが大人の雰囲気を演出している‥


中田は、席に着くなり最近の仕事ぶりや趣味のゴルフ、感動した映画、読みふけている本のことなど弾むように優に語りかけている。


優は熱く、そして楽しそうに話すそんな彼が大好きだった。
この人といつまでも一緒にいたい‥

いつも帰る時間が近づく度にそう思う。
‥今夜は‥やっぱり一緒にいるの難しいかな‥

好きだからこそ、わがまま言ってはいけない‥
彼が一番困る言葉を言ってはいけない。
優は自分に言い聞かすように、想いをワインとともに飲み込んだ。


‥奥さんや子供はいいなぁ。
当たり前のように彼と一緒に居れて‥

優は思ってもおくびにも顔にださないように努めていた。



そんな優の気持ちを察してなのか、偶然なのかはともかく、中田が初めて言った。

「明日まで、一緒にいたい‥」


優の頬に涙の粒がはしった。


‥うれしい‥

何も言わずに、潤んだ瞳で中田を見つめていた。

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