その時だった。小さな摩擦音をたててドアがスライドし、誰かが部屋に入ってきた。
なめらかな顔や起伏ある身体からして女性に見える。
白い長袖のシャツと白い長ズボンを履いている。モデルのような八頭身のスタイルだ。
目元は彫りが深いし、鼻は高い。しかし完全に西洋風ではない。モンゴロイドの血も混ざっている感じだ。彼女一人だけを見て推測するのも何だけど、日本は遺伝子レベルで国際化したのだろうか。
そんな彼女の髪は焦げ茶色で、ボリュームを持たせて肩まで伸びている。
「おはようございます。看護師の者です」
少しハスキーな心地良い女性の声だ。
「おはようございます」
僕はこれといった気持ちも無く半ば反射的にそう返した。
「あの、僕の病気はどうなったんでしょうか」
「完治しましたよ」
看護師は優しく微笑んだ。
「ほんとですか！？」
「ええ」
そういえば、看護師は日本語をしゃべっている。僕に合わせてくれているのだろう。第二公用語は日本語といったところか。
「良かった。有り難うございます。まさか目を覚ましたら完治しているなんて。信じられません」
「おめでとうございます」
「あの、僕はこれからどうすればいいのでしょうか」
「日本中の公営住宅の中から空き部屋を選んで無料で入居できますし、終身生活保証給付が月に３千グロービア支給されます。５００年前でいいますと１５万円の価値です」
「有り難い！」

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