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処刑生徒会長第三話・25

[813]  まっかつ  2007-11-18投稿
防音会議室の中を重苦しい沈黙がたゆたった。

『校長はどう思われます?』

プラチナフレームの眼鏡に手をかけて直しながら、墨沢ヘイゴは話を振った。

口髭の影をぎざぎざさせながら、校長は最早市民権のかけらもなき紙煙草の煙をくゆらせていたが、

『我々はまな板の上の鯉、さもなくば牧場の肉牛みたいなものだよ』

その所心は諦観に満ちていた。

『今さらじたばたしても始まらんよ』

『ではこのまま一生徒に好放題やらしたままで良いのですか?』

煮えきらぬ話に、沢西トオルは声を高めた。

『まだ12〜3才の子供が、いや、子供達が強大な権力を握り、そのために争い、銃火器で武装した私兵を動かし、のみならず莫大な富や利権を手にし、欲しいままに裁判を行い、友達や同級生の命や生死をまるで玩具みたいに扱う―これがまともな学校ですか?教育のあるべき姿ですか?』

立ち上がった一年主任は憤激のままにまくしたてたが、

『君だって、そのお化けみたいな生徒達から給料をもらっているのだろう?』

三年社会科・松島キヨタカは皮肉混じりに指摘した。

無力感と絶望感が、彼ら全てを覆った。

採用・昇進・昇給・処分―\r

全ては生徒会が握っている。

職員会議にも生徒指導の現場にも生徒会は参観もしくは調査の権限を持ち、いつでも介入出来る。

それどころか、豊富な資金を利用して、教員をたらしこみ、スパイ活動まで行わせている。

その気になれば、教員達を切り崩す位、お手の物だ―\r

増してや、ここ第三中学校の生徒会長は梅城ケンヤだ。

並の会長ではない―\r

『結局、私達の梅城下ろし工作は水泡に帰しましたわね』

一年理科・木藤シズエは白衣姿を闇に隠しながら肩をすくめた。

『一条フサエ事件は、彼の政治生命を断つ最高のチャンスだったのですが、私達の校内掲示板工作はむしろ裏目に出たみたいです』

『しかしまあ、何と言うか―これはこれでみっともない話しですなあ―生徒達に道義や規範を説くべき我々が、よりにもよってネットで一人の生徒をこきおろし、扇動を図るとは』

二年国語・菊地ジュンヤは、嘆きながら溜め息をついた。

まるで武家時代の公家みたいに、彼らのやり方は隠微を極めた。

古い権威にしがみ付き、危険を恐れながら権謀術数をもてあそぶ以外に何も出来ないのだ。

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