ネットな恋(3話)
桜井からメールを受け取った翌日、上杉はある会議室にいた。
広報のメンバーとのミーティングだ。
海外赴任の長かった上杉にとって、出席者のほとんどが初顔合わせだ。
その中に透き通るように色の白い、上品でしっとりとした栗色の髪がよく似合う女性がいた。
桜井だった。
少し浮き足立った上杉は平静さを取り戻すように、手元の資料に目を落とした。
上杉を主体とした社外広告に対して、一通りの議論が進むと最後に上杉が聞いた。
「でもなぜ私が選ばれたのでしょうか?」
上杉は不思議でしょうがなかった。広報に知り合いがいるわけでも、特別アピールしたこともないのに…
この問いに桜井の上司が答えた。上杉を推薦したのは桜井であること。
これからの会社のイメージを象徴する人物に近いのが上杉であったこと。
等々…上杉は見られてるイメージと自分で思う自画像のギャップに複雑な思いでいっぱいだった。
会議が終わると上杉が声をかける前に、桜井から話しかけてきた。
「上杉さん、今日はお忙しい中ありがとうございました。
お引き受け頂いて、とても光栄です。」
会議中の凛とした表情とは違い、はじけんばかりの笑顔で律儀に挨拶してきた彼女に、上杉は好印象をもった。
「桜井さん?だったよね」
「はい。。」
「今日合うの初めてだよね?前にあったこと忘れてたら申し訳ないけど‥」
「上杉さんはお忘れでしょうけど‥一度だけ前にお会いしてますよぉ。」
桜井は上杉の少し困った顔を見て、微笑んだ。
桜井が言うにはこうだった。
三年前、まだ上杉が海外に赴任していた頃、ある全社的なプロジェクトの会議への出席を求められて一時帰国したことがあった。
当時、入社したばかりの桜井は、上司の指示で部門データのコピーを、会議の出席者全員に配る役割を任された。
新人の桜井は資料を配るだけの仕事とはいえ、緊張のあまり会議室の扉をなかなか開けずにいた。
ちょうどその時、海外からの電話で会議を中座していた上杉が戻ってきた。
それが上杉と桜井の初めての出会いだった。
〜つづく〜
広報のメンバーとのミーティングだ。
海外赴任の長かった上杉にとって、出席者のほとんどが初顔合わせだ。
その中に透き通るように色の白い、上品でしっとりとした栗色の髪がよく似合う女性がいた。
桜井だった。
少し浮き足立った上杉は平静さを取り戻すように、手元の資料に目を落とした。
上杉を主体とした社外広告に対して、一通りの議論が進むと最後に上杉が聞いた。
「でもなぜ私が選ばれたのでしょうか?」
上杉は不思議でしょうがなかった。広報に知り合いがいるわけでも、特別アピールしたこともないのに…
この問いに桜井の上司が答えた。上杉を推薦したのは桜井であること。
これからの会社のイメージを象徴する人物に近いのが上杉であったこと。
等々…上杉は見られてるイメージと自分で思う自画像のギャップに複雑な思いでいっぱいだった。
会議が終わると上杉が声をかける前に、桜井から話しかけてきた。
「上杉さん、今日はお忙しい中ありがとうございました。
お引き受け頂いて、とても光栄です。」
会議中の凛とした表情とは違い、はじけんばかりの笑顔で律儀に挨拶してきた彼女に、上杉は好印象をもった。
「桜井さん?だったよね」
「はい。。」
「今日合うの初めてだよね?前にあったこと忘れてたら申し訳ないけど‥」
「上杉さんはお忘れでしょうけど‥一度だけ前にお会いしてますよぉ。」
桜井は上杉の少し困った顔を見て、微笑んだ。
桜井が言うにはこうだった。
三年前、まだ上杉が海外に赴任していた頃、ある全社的なプロジェクトの会議への出席を求められて一時帰国したことがあった。
当時、入社したばかりの桜井は、上司の指示で部門データのコピーを、会議の出席者全員に配る役割を任された。
新人の桜井は資料を配るだけの仕事とはいえ、緊張のあまり会議室の扉をなかなか開けずにいた。
ちょうどその時、海外からの電話で会議を中座していた上杉が戻ってきた。
それが上杉と桜井の初めての出会いだった。
〜つづく〜
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