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夢の狩人

[605]  朝倉令  2006-03-27投稿
 僕は文字通り夢見心地でいた。

 一昨日、共に過ごした女の子と戯れている夢だった。


「ふぁーあ、何だか良い夢だったな」

生あくびをしながら起き上がろうとした僕の目に、最初に飛び込んできたのは弓を引き絞り、矢を向ける男の姿……って


「うわわわっ!!な、何スかアンタは!」


男は、平安時代の貴族が着ていたような狩衣(かりぎぬ)を身につけ、黒い烏帽子をかぶっていた。

 鼻髭をキレイに整えた、貴品のある顔立ちだ。

「何と申すか? 見ての通り、貴殿の夢を狩らせて貰うだけじゃ」


言うが早いか、男はヒョウと矢を放ち、僕の頭を射ぬいていた。


一瞬、これまでの人生が走馬灯の様に脳裏をよぎった……はずだった。

  あれ?何ともない… トンッと音をたてて壁に突き刺さった矢に、なにやら護符の様なものがヒラヒラしていた。


「ふうむ、大した夢ではない」


矢にぶら下がっていた紙片を丸めてポイと放り出した男は、失望したような顔で『庶民はいかんな』とつぶやき、頭を振り振り消えていった。


 夢?……

思わずつねってみた頬は、とっても痛かった。



 その紙切れは、記念にとってある。




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