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航宙機動部隊前史・22

[426]  まっかつ  2007-11-23投稿
こうして見ると、航宙遊牧民族の生き方・考え方はどこまでも合理性を追及する事のみに集中している様に思えるし、事実、いくつかの分野では全くその通りだった。
だが、宙際連合側がメディア工作や世論操作までして意図的に非難した様に、効率性の為に人権・人道がないがしろにされ、又、言わゆる弱肉強食の競争社会が礼賛され、付いて行けない者は容赦なく弾かれ見捨てられたのかと言えば、そうではなかった事が後代の研究によって明らかにされている。
少なく共、航宙遊牧民族の主要な勢力では、実態は逆だった。
ヒトを資財と見なすからこそ人権が重んじられ、又、不要なタブー無き自由な思想・社会風土の中で、医療技術は目覚ましい進歩を遂げ、宙際連合側では否定された限定クローン技術を基礎とした再生医療が花開き、特に脳を含む臓器疾患や障害に苦しむ事例が零になったのは、彼等が古い宗教的迷信を打破し、今ある人命を優先したからこそ成し遂げられた物だった。

更に福祉や社会保障制度でも、個人や世帯により優先度を付けて必要な支援や資源を分配する制度が実施され、貧富の格差の解決でも標準偏差を上手く応用して、徴税と支給を調節しながら使い分ける等、先進的かつ柔軟な施策で社会の不合理性はほぼ根絶され、結果、自由競争以外の分野でも航宙遊牧民族は当時最も先進的な社会を実現していたのだ。

当然、彼等の開放的で差別無き体制に魅力を感じて、宇宙中から優秀な科学者・エンジニアが集まる。
又、定住文明では解決し難い社会問題や因習・差別等に苦しむ人々がチャンスを求めて、或いは、倫理上の制約が邪魔して受けれない治療を求めて患者やその家族達も、元いた惑星を見捨てて大量に超光速宇宙船団に流入したのは、だから不自然な事では無かったのだ。

銀河元号七星紀一杯で、宙際連合では加盟国の二割が脱落し、そこの市民を中心に約六0億人を失った。
それは同時に、それだけの国と人間が航宙遊牧民族のモノになった事を意味していた。

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