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Raven Curse 《序章―1》

[199]  シラ  2007-11-25投稿

夜の帳に包まれた暗澹たる世界。
深夜の街中を、一人の男が疾走している。

時折通過する街灯の光が、男の容姿を照らし出す。
その姿は異様だった。
黒のジャンパーに映える夥しい血痕。手に持つ血濡れのナイフが、不気味な光沢を放っている。
その男を、2人の警官が追い掛けている。彼等の怒号は周囲に響き渡り、夜の静寂を侵蝕している。
それは男の耳朶を打ち――しかし、男は速度を緩めることはない。
路地裏に駆け込むと、闇を切り裂くように、一気に加速する。

次第に怒号は遠退き、やがて消え失せた。
男は足を止め、後ろを振り返る。
警官達の気配はない。
男は安堵したのか、脱力したように、壁を背に腰を落とす。

「はあ、はあ…!はは!ざまあみろ!へへへ……、痛っ!」

不意に男の右腕に激痛が走る。
右袖が肘の部分まで切り裂かれ、その内側から血が滴り落ちていた。

「くそったれが…!ふざけやがって、あの糞女…!」

男は悪態混じりに唾を吐き出す。
脳裏に浮かぶ、女の冷笑。
それを思い出すたびに、男は顔をしかめた。

だが彼の安息の時は、一筋の光によって破られた。

「見つけた!奴だ、追えっ!」

2人の警官が、猛然と男に駆け寄ってくる。男は即座に察知し、走り出していた。

男は足の速さには自信があった。
学生時代、陸上部に所属し、幾つもの功績を残した経験がある。そこらの鈍い警官共に負けるつもりはない。
しかし、彼の右腕の出血は思った以上に酷かった。
男の体力は無意識の内に吸い取られ、若干貧血で頭が重い。逃げ切る自信はあまり無かった。

「はあ、はあ!こちら○○!犯人を発見、追跡中!至急応援を要請願う!現在地は――」

後ろで警官が無線連絡を取っている。
どうやら応援を呼んだらしい。
万事休すか…!

そう思った刹那、男の目に何かが映る。
真上の街灯が照らし出すそれは、数本の花束と、写真立てに入った、少女の写る一枚の写真――
否、それだけではなかった。
彼の瞳が真に捉えたのは、黒く、霧のような存在だった。
それは写真や花束を覆うように、神秘的に佇んでいる。
男は口角を吊り上げ、低い声で呟く。

「黎垢(レイク)…!」

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