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夢負人?

[369]  朝顔  2007-11-26投稿

宙を見つめたまま田上は何か考えているようだった。
「悠斗……今日の放課後空いてるか?」
「放課後?」
特別な用事ではないが悠斗は行かなければならない所があった。しかしこんな田上を放っておけるはずもなく、言葉を詰まらせた。
「気にするな。何か用があるんだろ?」
「あ、あぁ。母ちゃんに頼まれて買い出しに……でも別に今日じゃなくても」
「いいんだ」
言い掛けた悠斗を遮り田上は寂しそうな目をして言った。
「おばさん元気か」
「まぁ、ぼちぼち。相変わらず外には出たがらないけどな」
悠斗の父親は15の時に失踪した。それから僅か半年で母親宛に手紙が届いた。中には紙切れ一枚。離婚届けだった。
それからというもの母親は家にこもりきりになり、慰謝料と養育費があるから何とか家計は保てるものの家事全般は悠斗の役目になっていた。
「珍しくカレー作ってくれるっていうからさ、材料買いに行こうと思って」
「そうか、良かったな」
ありきたりな言葉だが悠斗の苦労を知っている田上に言われると、素直にありがとうと思えた。
「早く買って帰ってやれ。おばさん待ってるぞ」
「でも……」
「俺なら大丈夫だから」
まだ本調子には見えないが、これ以上田上に気を遣わせてしまいそうで、悠斗は渋々腰を上げた。
「なぁ悠斗」
保健室を出ようとした悠斗を呼び止めた田上。
「肩……平気か?」
一瞬戸惑ったが、大袈裟に右肩を振り回して見せた。
「全然余裕!言ってるだろ、これはお前のせいじゃないって」
「そうか……」
「あぁ。じゃあな、何かあったら電話しろよ」
頷いた田上に大きく手を振りながら悠斗は保健室の扉を閉めた。

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