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紙一重 1

[267]  大堂寺 倭  2007-11-26投稿
※ジャンルは恋愛となっておりますが、男同士の恋愛に理解が無い方、嫌悪感のある方は、今すぐお帰り下さい



 −変化なんて、ほんの些細な出来事でカンタンに起こるんだなぁ…−

 バイト先のキッチン内で壁に押し付けられた状態で相手を見上げ、そう思いちあたら何だか悲しくなってきた、気がする。
 しかも、出会い方は最悪だった。


 4月に大学へ入学してもう2ヶ月以上経ち、仕送りばかり貰ってばかりいられないと節 雪実(フシノ ユキミ)はバイトを始めることにした。5人兄弟の5男として生まれ、両親は幼い頃に死んでしまったため、彼の記憶にはほとんどなかった。
 そのため長男、次男の双子が親代わりに面倒を見てくれていたのだ。これ以上世話になるのは正直辛いところもある。しかも大学へ行く事も認めてくれたのだ。いつまでも甘えてばかりいられない。
 学費は頼るしかないけれど、せめて生活費くらいは自分でなんとかしたかったのである。
 そんな彼が選んだのは、居酒屋のキッチンだった。

 兄ちゃん達、俺は頑張るよ!

 新しくスタートをした、ハズだった。


 あれから3ヶ月、だいたいのメンバーとは顔を合わせるようになってきた。実のところ、今日はシフトが入っていないのだが、ホールが忙しいため助けに来てくれと言われてやってきた。
「おはようございまーす」
 あいさつをして店長の元に向かえば、ホールの制服を手渡された。彼としては紺の作務衣を受け取るつもりだったのに、受け取ったそれを見て目を丸くしてしまった。どう見てもそれは−−
「……女性用?」
「だってほら、ユキは男物だったら大きすぎるだろう」
 そう言われては何も言い返せないのが悲しいところだ。なぜなら、一般男児に比べ、彼は小柄で細身だからである。
「だからってコレは…!!」
 しかし彼の抗議には耳を貸さず、店長は一人のホール女性を呼び寄せた。
「紅(クレナイ)ちゃん、ユキに着方を教えてあげなさい」
「はい!!」
紅と呼ばれた彼女は満面の笑みで雪実とスタッフルームへと入って行ったのである。

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