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甘いワナ?

[355]  夢月  2007-11-27投稿
彼女と付き合ってからの数日、思いのほか楽しかった。


俺は彼女とほとんどの時間を一緒に過ごした。


付き合って初めて、登校するときのバスが同じことを知った。


彼女に告白した次の日の朝、バスの中…

「おはよう」

思いがけず彼女に声をかけられ、彼女を見つめたまま固まってしまった。

「…おはよう」

と、とりあえず返事をしたけれど、顔には

“どうして?”

と疑問が浮かぶばかりだった。

彼女と約束したわけじゃない。

偶然なんだろうか?

そんな思いを巡らしてるのを知ってか知らずか、彼女は当たり前のように俺の傍に場所をとった。


ふいに、良い香りが鼻をくすぐる。

初めて嗅ぐ香りではない。
いつもどこかで感じていた香り。

彼女に視線を移すと、彼女は俯いて俺の胸元を見つめていた。

俺の視線に気付いたのか、彼女がふと顔をあげた。

目が合うと、どちらからともなく照れ臭くなって笑みを浮かべた。

その瞬間、胸が温かいもので満たされた。


“愛しい”


この彼女がとても愛しくなった。


お互いバスの中ではほとんど会話を交わさなかった。
ただ、それだけでも俺たちにとって、幸せな時間だった。

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