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彼の恋人

[115]  高橋晶子  2007-11-27投稿
「料理はともかく裁縫が得意な男を煙たがる女はキャリア志向とはそぐわないね」
千聖の一言が無性に気になってしまった博文は、まだお互いに素性の知れない落書き相手に次の質問を書き込んだ。

ファッション専門学校かぁ。
ところで、裁縫が出来る男は尊敬出来るかな?

次の日の午後は2時限通して家庭の必修授業だ。その日の課題は、古着をリサイクルしたトートバッグ制作。早くも返事が気になる。

昼休みになり、博文は孝政のクラスに押し掛けた。孝政の机には、いつもの手弁当に家庭の授業で制作したトートバッグが置かれている。トレーナーをリサイクルしたものだ。
「なぁ、モーリー。つくづく変な話だよなー。男女平等で家庭の授業を受けてる筈なのに、料理好きの男は平気で裁縫好きの男はみんな色眼鏡で見てしまう」
「そう! それで被服室の掃除当番で残ってた1年生の男の子を捕まえて、手芸部に入れさせたんだ。最初は嫌々だったけど、そんなのどうでもよくなったみたい」
「お前、そんな事していたの?」
「好き好んで手芸をする男は一人より二人、二人より沢山いる方がいいに決まってるでしょう?」
少なくとも古臭い性役割を押し付けられてきた大人がいる限り、手芸が好きな男は敬遠される。孝政は常にそう思い、偏見に耐えてきた。SNSを通じて同じような思いをしていた同志と知り合い、漸く自分に自信が付いてきた所である。

翌日、博文はナイロンのカッパをショルダーバッグに忍ばせ、一番乗りで登校した。
自分の机をよく見ると、

中に紙切れを入れといたから、よーく読んでね。

という落書きが目に留まる。慌てて机の中を覗くと確かに紙切れがある。紙切れにはこんな事が記されていた。

バカモノ!
そんな事言ってるうちは、まだまだ男至上主義から片足だけ抜けられないでいるね。
ホントに男至上主義が嫌いなら、料理も裁縫も出来て他人に尊敬されるようになってよ!

すっかり気分が沈んだ博文は、そのまま朝練に励んだ。朝練が終わる頃には元通りになり、何事もなかったかのように授業が捗った。
そして、家庭の授業では初めて裁縫で先生に褒められ、一人上機嫌だった。

期末試験はもうすぐに迫っている。

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