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深夜の本堂

[564]  朝倉令  2006-03-30投稿
 私は、幼少期を親類のお寺で過ごし、武道を骨の髄まで叩き込まれながら育つと言う、一風変わった少年時代を送ってきました。


 ここで、その少年時代の不思議な体験を綴らせて貰う事に致します。






「令! また喧嘩してきたのか」

 言葉と共に、私の頭上に住職の鉄拳が降ってくる。

「だって!…アイツら弱い者イジメばっかして……」

 言い募る私の言葉には耳も貸さず、住職はいつも通り荒縄で私を本堂の柱に括りつけ『飯は抜きだ』と怒鳴った後、足音高く去っていった。






「?またお葬式あったんだっけ」


 すっかり慣れっこになっていた私は、朝の居合いの稽古まで寝てりゃ済むこと、と熟睡していた。


 誰もいない筈の本堂がやけに賑やかな事に気付き、私は目を覚ましていた。




 人の話し声、ペタペタと本堂の板敷きを歩く音、納骨堂から聞こえてくるカサッとお骨の崩れ落ちる音……


「あの人かな?」


 私は、ボーッとおぼろに霞む人影がふらふらと彷徨い歩くのを見て、そう思っていたが、いつしか再び眠りの世界に入り込んでいた。




「このクソガキが!ちょっとは恐がってみぃ」


 朝稽古の時、私の頭を軽く小突きながら住職が呆れた顔で笑っていた。 





人は『死ねば終わり』じゃないんだなぁ、と思う少年時代の私でした。





 終わり

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