一つの傘
あんなに雨の日を愛おしく思ったことはない
放課後の下駄箱で彼は雨を眺めながら少し肩を落として立ち尽くしていた
足早に彼に近づいて傘を差し出した
『入る?』
言葉を交わしたこともなかった私を見て驚いた顔をした
今まで恋に臆病だった私がずっと憧れていた彼の隣にいて彼に傘を差し出している
緊張や恐れなんて考える前に私の足が彼に向かいたがっていた
彼の寂しそうな背中が私に勇気を与えてくれた
『俺が持つよ』と言って私の手から傘を握る時に手が触れた
心臓が激しく動く
赤面した顔を隠すように
照れた顔を見られないように俯いた
考えてみればあの瞬間彼への想いは憧れから恋へと変わった
相合い傘が夢だったわけではない
ただ彼と並んで歩きたかった
傘に降る雨の音が心地良くて
彼の隣が心地良くて
駅までの道が永遠に続けばいいと思った
付き合いは二年で終わったけど
あんなに人を愛せたこと
愛されたことを大切に思う
片思いが両思いに変わってそれまでの淀んだ景色が彼の存在で明るく綺麗に映った
幸せなんて永遠ではないけれど一つの勇気であんなにも人生が変わった
何処かで二人の歯車が狂って
私が幼かったのか彼が幼かったのかどちらが狂わせたのかそんなことは分からない
ただ少しのすれ違いが距離を広げてしまっただけ
憎み合ったわけではない
嫌いになったわけではない
だから今でも思い出す
彼を
彼との思い出を忘れたいと強く思う度
その強すぎる願望で彼への想いがまた膨れ上がる
今でも大好きで忘れることはない
無理して忘れることもない
彼を愛した事実を彼と過ごした日々を大切に胸に閉まって生きて行けばいい
雨の日はいつも思う
もう一度彼に会いたい
大人になった私達で出会いたい
もう一度戻れるならあの場所で
あの傘を差し出す瞬間へ戻りたい
そしたら変わらない笑顔で振り返って
あの時のように『ありがとう』って言って私を見て欲しい
一つの傘で切れることのない未来へ二人で歩いて行きたい
放課後の下駄箱で彼は雨を眺めながら少し肩を落として立ち尽くしていた
足早に彼に近づいて傘を差し出した
『入る?』
言葉を交わしたこともなかった私を見て驚いた顔をした
今まで恋に臆病だった私がずっと憧れていた彼の隣にいて彼に傘を差し出している
緊張や恐れなんて考える前に私の足が彼に向かいたがっていた
彼の寂しそうな背中が私に勇気を与えてくれた
『俺が持つよ』と言って私の手から傘を握る時に手が触れた
心臓が激しく動く
赤面した顔を隠すように
照れた顔を見られないように俯いた
考えてみればあの瞬間彼への想いは憧れから恋へと変わった
相合い傘が夢だったわけではない
ただ彼と並んで歩きたかった
傘に降る雨の音が心地良くて
彼の隣が心地良くて
駅までの道が永遠に続けばいいと思った
付き合いは二年で終わったけど
あんなに人を愛せたこと
愛されたことを大切に思う
片思いが両思いに変わってそれまでの淀んだ景色が彼の存在で明るく綺麗に映った
幸せなんて永遠ではないけれど一つの勇気であんなにも人生が変わった
何処かで二人の歯車が狂って
私が幼かったのか彼が幼かったのかどちらが狂わせたのかそんなことは分からない
ただ少しのすれ違いが距離を広げてしまっただけ
憎み合ったわけではない
嫌いになったわけではない
だから今でも思い出す
彼を
彼との思い出を忘れたいと強く思う度
その強すぎる願望で彼への想いがまた膨れ上がる
今でも大好きで忘れることはない
無理して忘れることもない
彼を愛した事実を彼と過ごした日々を大切に胸に閉まって生きて行けばいい
雨の日はいつも思う
もう一度彼に会いたい
大人になった私達で出会いたい
もう一度戻れるならあの場所で
あの傘を差し出す瞬間へ戻りたい
そしたら変わらない笑顔で振り返って
あの時のように『ありがとう』って言って私を見て欲しい
一つの傘で切れることのない未来へ二人で歩いて行きたい
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