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Raven Curse 《序章―3》

[170]  シラ  2007-12-01投稿

照明の白い光に包まれた室内で、僕はボーッと窓外の景色を眺めていた。
幾重にも連なる重厚な雲が、天空を灰色に染め上げている。それは地上に影をもたらし、おおよそ朝に似つかわしくない陰鬱な空気を醸し出している。
朝から嫌な天気だな…。
窓から目を反らすと、対面に座る父が目に入る。父は新聞に目を通していた。
その瞳は虚ろで、どこか沈んでいる。

「では次のニュースです。深夜2時頃、○○の民家で妻が夫に刃物で刺され、死亡する事件が起きました。
犯人は**会社社員、メイス・ダグラー容疑者32歳。
また同刻30分過ぎ、彼を追い掛けていた警官2名の遺体が同僚により発見されており、傷跡からメイス容疑者が殺害したものと判断されています。
彼は現在逃亡中で、行方不明となっています。」

陰鬱な天気に呼応したように、陰惨な事件の報道がテレビで流れていた。
ふと、脳裏を掠める記憶の断片。あの日もこんな天気だった。そしてあの時も、殺人事件のニュースが流れ――

「どうしたディア?さっさと食べないと遅刻するぞ。」

父の咎める声で我に帰る。いつもの悪い癖だ。
内心自戒しながらも、時計を横目に、朝食に箸を急がせる。悠長に食べている余裕はない。
しかし、父の声色に若干の動揺が含まれていることに、僕は気付いていた。
父もまたあの日のことを思い出していたのだろうか。
そう思うと、胸が悲痛な気持ちで支配された。

朝食を食べ終えた僕は、食器を流しに運ぶ。今日は父が家事当番だった。父は手慣れた様子で、2人分の食器を洗い始める。

「じゃあ僕先に行くよ。」

その父の背中に声を掛ける。

「ああ、気をつけてな。」

父の返事を聞き流しつつ、僕は玄関に向かおうと父に背を向け――

え…?

僕は違和感に気付き、振り返る。一瞬父の背中に、何か黒い渦のようなモノを目にしたからだ。
しかし振り返ったとき、父の背中には何もなかった。
見間違いか…。
きっと目が疲れているんだろう。
別段気にも留めずに、再度玄関へ向かった。

だがこの時僕は知らなかった。
見間違いなどではない。
それは、これから起こる惨劇の、微かな兆候だったのだ。

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