夢負人?
迷惑そうに煙草に火をつけ悠斗を見る夢路。
「困るんだよねぇ、営業時間守らず来る客って」
「もう一時回ってますよ」
壁に掛かっている時計を見ると針は一時半を指していた。頭を抱え何やら独り言を言い出した。
「あれ程飲み過ぎないようにしてたのに……二杯でいいだろ、俺」
自分に言い聞かせる夢路を哀れに思うも、悠斗にはそれどころではなかった。
「依頼しにきたんです」
「依頼?あー……明日にしてくれる?飲み過ぎて頭痛いから」
「ちょっと!一刻を争うんですよ!」
だるそうに椅子に寄りかかる夢路に焦りが治まらない悠斗は、机を叩き目を覚まさせた。
「友達が倒れたんです。またあの夢にうなされてるって……かなり衰弱してるって……死ぬかもしれないんです!」
「それが奴らの狙いだよ」
平然と言ってのけた夢路。予想もしなかったその言葉に悠斗は夢路を凝視した。
「俺たちはそいつらの事を大まかに妖夢と呼んでる。奴らは人の脳の中でしか生きられず、人の生気や感情を主食にしている下等な生き物だ。だから夢を見させる。夢を見させ普段の生活だけではなかなか出ない負の感情を増殖させ、食い尽くせばまた違う人間の中に移り住む」
「何だよそれ……それで田上が死ぬっていうのか?」
高ぶる感情を抑え絞り出すように出た声は怒りに震えていた。
「人間は脳や血だけで生きるものじゃない。生きるのを諦めた人間に待つのは死だけだ」
「どうすればいい?どうすればあのピエロを田上から追い出せる?」
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