失ったもの
とろりと濃い闇が私を包む。
その闇のあまりの濃さに息が詰まった私はベッドの上でどんどんと水分を失い干からびていく。
大好きな人がいた。
本当に大好きだった。
自分以外の物を守りたいと思ったのは初めてだった。
失ってしまった私は一人で泣くことしかできない。泣きはらして赤くなった目なんか可愛いはずがないのに。涙で汚れた顔なんかであの人を引き戻すことなんかできやしないのに。全部分かっているのに涙は止まってくれない。このまま溶けて消えてしまえればいいのに。
今でも不意に思い出す。
つないだ手が熱かったこと
切ない吐息
混じり合った体温
二人で浸かったバスタブは狭くって、余計にあなたを近くに感じさせて、私はいつもドキドキしていた。二人の間に湯船の湯が漂うのさえもどかしくって必死に体をくっつけた。
あなたと一緒に歩いた夜中のコンビニまでの道はあんなに暖かかったのに。どうして今はこんなに冷たいんだろう。
ふらつく足元はどんどん重くなって、気づいたら錆びた汚い思い出の鎖に捕まってしまっている。
外そうともがくほどに食い込んで、私の心が血を流す。
痛いよ。苦しいよ。
泣いてばかりの弱い女の子のふりなんてしたくないのに。
強く噛み締める唇でさえあなたの面影を写して、叫んでいる。
お願い。どうか。
何もいらないの。
あの人を返して。
私をひとりにしないで。
ひとりぼっちは苦しいよ。
いっそこの胸の痛みが病気ならいい。
それならばあなたが見舞いに来てくれるかもしれないから。
叶わない願いで体と心をベッドに縛り付けて今日も涙を流す。
窓際のポインセチアはあの人の首についていたあざと同じ色で、私をせせら笑っている。あなたを失った私には抵抗する力も残っていない。今日も私は私を殺しつづける。
その闇のあまりの濃さに息が詰まった私はベッドの上でどんどんと水分を失い干からびていく。
大好きな人がいた。
本当に大好きだった。
自分以外の物を守りたいと思ったのは初めてだった。
失ってしまった私は一人で泣くことしかできない。泣きはらして赤くなった目なんか可愛いはずがないのに。涙で汚れた顔なんかであの人を引き戻すことなんかできやしないのに。全部分かっているのに涙は止まってくれない。このまま溶けて消えてしまえればいいのに。
今でも不意に思い出す。
つないだ手が熱かったこと
切ない吐息
混じり合った体温
二人で浸かったバスタブは狭くって、余計にあなたを近くに感じさせて、私はいつもドキドキしていた。二人の間に湯船の湯が漂うのさえもどかしくって必死に体をくっつけた。
あなたと一緒に歩いた夜中のコンビニまでの道はあんなに暖かかったのに。どうして今はこんなに冷たいんだろう。
ふらつく足元はどんどん重くなって、気づいたら錆びた汚い思い出の鎖に捕まってしまっている。
外そうともがくほどに食い込んで、私の心が血を流す。
痛いよ。苦しいよ。
泣いてばかりの弱い女の子のふりなんてしたくないのに。
強く噛み締める唇でさえあなたの面影を写して、叫んでいる。
お願い。どうか。
何もいらないの。
あの人を返して。
私をひとりにしないで。
ひとりぼっちは苦しいよ。
いっそこの胸の痛みが病気ならいい。
それならばあなたが見舞いに来てくれるかもしれないから。
叶わない願いで体と心をベッドに縛り付けて今日も涙を流す。
窓際のポインセチアはあの人の首についていたあざと同じ色で、私をせせら笑っている。あなたを失った私には抵抗する力も残っていない。今日も私は私を殺しつづける。
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