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たいせつな人

[247]  Hiro  2007-12-02投稿
教科書を買いに来たのは私が1番だと思っていた。

朝の7時半。
販売は8時から。

まさか2番だとは思わなかった。

くるくる天パのポッチャリさん。
いかにも優等生。

それが彼女の第一印象だった。

「おはよう、早いね。」
どちらが先に言ったのか覚えていない。

彼女が私に話したことは、学生が多いので早くこないと混むのではないかと心配していたこと。
まだ不慣れな大学生活に対する期待と不安があること。だった。

おしゃべりという感じではなく、ただ私がいたから黙っているのもいけないだろうという優等生らしい意識からのようだった。

その頃の私は高校時代にあったひどいイジメのせいで見事に屈折した人間だったから誰に対してもガードが固く、心許せるのは僅かに妹と恋人だけだった。

悪意的なものでない何気ない、むしろ私を気遣かっての会話に少し緩んだ心を慌てて引き締め(油断しちゃダメだ)と思ったときに教科書の販売員がやってきて幾つかのそれを並べ始めた。

1番に教科書を買った優等生は「じゃあ、またね」と微笑み、先に講義室に入って行った。

教科書買うだけでも1番になりたかったなと思う私を尻目に…。

次にあったのは研究室だった。

研究室を決める際にいろいろな講師の紹介を聞き、ここと思う研究室に行くという決め方をとる私の大学は20もの研究室があり、その中で選んだ第13研究室で彼女に会うとは思いもよらなかった。

正直、決め手を聞いてみたかった。

ちなみに私の決め手は講師の先生がおじいさんで優しそうに見えたことと、彼が国文学の講師だったこと。だった。

もうなるべく痛い思いはしたくなかったから厳しそうな講師やクセのありそうな講師は避けたかった。

大学に求めたものは自由だった。

そんなわけで特に企業にコネもなく先の就職を考えるにも全く不利そうなおじいさん講師を優等生が選んだ理由がわからなかった。

私はきっとこいつと縁があるんだと思った。

底辺高校からそれなりに優秀な高校の学生が入る地元大学に何とかはい上がってきた私。

何かが始まりそうな予感がした。

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